第12話
そして基本的に高位貴族の子息、令嬢はこの時点でそれなりの教育を施されていることがほぼ。学園を卒業と同時に成人するのだからそれは当たり前といえる。
卒業すれば、幼い頃から当たり前のように決められている婚約者と婚姻を結び、将来継ぐ領地の経営を本格的に学び始める。そして、親が家督を譲った頃には次の跡継ぎも生まれており、それが繰り返されていくのだ。
だから、入学時点での高位貴族の子息、令嬢は学園での勉強だけでなく、社交にも精を出し、領地でのことも遠隔で学ばなければならない。そこに従者が1名だけでは、到底手が回らず、本来ならもっと家の者をゾロゾロ連れてきたいくらいだろう。
はじめは高位貴族も1名だったらしいけど、ちょっと前の卒業生である公爵家の子息が王家に頼んだことで増やされたとアシュリーは記憶していた。
もちろんアシュリーの家は子爵家なので従者は1名。名前をアイクといい、姓はない。マーサの息子で、今年42歳。マーサと同じほんわり系の顔で優しそうな目元が好印象の美中年である。
モブの従者なのにこの顔面偏差値。どうやらこの世界には美形しか存在しないらしい。
そう思うアシュリーも、と、アシュリーは馬車の窓に映る自分の顔を見てため息を吐いた。
モブらしくブラウンの髪という地味さはあるが、シャンプーもリンスもないこの世界で絡まり一つもない艷やかさ。エメラルドの瞳はキラキラと輝いていて、日本人のしょうゆ顔に慣れている自分から見ればモブにしておくにはもったいないくらいの美少女だ。
もちろん、ヒロインのキャロラインや皇太子のミカエル、そして彼女の推しであるヴァネッサはそれ以上に美形ではあるが、貴族とは容姿だけで血縁を繋いできたのでは?と思うほど美形が多いため、アシュリーには自分の容姿に不満はなかった。どちらかといえば自分の美しさにため息が出る程度には気に入っている。
ナルシストだと周りに思われたくはないからお首にも出さないが、実は自分を着飾って鏡の前でポーズを取って遊びたいくらいだ。
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