入学式当日は、イベントの嵐
第11話
「お嬢様、行ってらっしゃいませ。」
「ええ、行ってくるわね、マーサ。」
マーサの温和な笑顔に笑みを返して、従者のエスコートで馬車に乗り込む。ちなみに、学園での従者は1人につき1名つけることができるが、侯爵家以上の令嬢であれば2名つけれることになっていた。
それは、高位貴族、それも上の方となればあらゆる面でやらなければならないことがてんこ盛り。学園では身分差などなく、誰もが平等に過ごせることを謳ってはいるけど、それは所詮建前。
学園在学中もサロンで社交をして将来の勢力図を描いていかなければいけないし、定期的に行われるお茶会は誰が主催かでどの家格の家までが呼ばれるかが決まる。
貴族は一括りに貴族と呼んでいるけど、実は一代限りの騎士爵から子爵までは下位貴族、伯爵家から公爵家までを上位貴族と分類される。下位貴族と上位貴族では、求められるマナーも違うため、公爵家のお茶会に騎士爵を軽々しく呼べば、下の者が単に恥をかいてしまう、ということにもなりかねない。
それに、上位貴族をお茶会に招くとなれば、茶葉やお菓子、装飾品にいたるまで失礼のない程度のクオリティーが求められてしまう。
言ってみれば全てはお金。お金を湯水のように使ってとりあえず豪華にすればいいというわけでもないけど、それなりのものを用意するお金なんて、下位貴族には到底無理な話だ。
だけど、高位貴族には逆に、下位貴族の者たちへの配慮も求められる。この国では貴族家の多くは下位であり、それ以上に平民が多い。それらを纏め、導き、皇王を支えることが上位貴族としてのあり方。
だから、爵位もお金も足りないから交流をしませんというのは無理な話で、きちんと彼らが無理をしない程度のお茶会などで交流を図るのもまた、上の人間としてのあり方なのだ。
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