第2話

「もうすぐ学園入学でございますね。まぁ、お嬢様はもうある程度学ばれている状態。少々退屈に感じてしまうかもしれませんが、学園で学ぶことはなにも学問だけにとどまりませんから。」



ーーーたくさん、お友達を作ってくださいね。




柔らかな笑顔でそう言う彼女は、私の髪を整えながらよく喋る。彼女は私をお嬢様としか呼ばないし、もちろん自分の名前も名乗らない。名前すら分からない状況では、どういう行動を取っていいかも分からない、けど。



なんだかとても、愛おしそうに笑うから。



「ええ。たくさんお友達を作りたいわ。だけど、私は親友と呼べる方に出会いたいの。」



無意識に、そんな言葉を吐いていた。



その途端、私の頭の中に、膨大な【知識】が流れ込んでいく。




『たくさんお友達を作りたいわ。だけど、私は親友と呼べる方に出会いたいの。』


『あら、そんなところで泣いてどうしたの?』


『はじめまして。私はアシュリー・ケイス。ケイス子爵家の令嬢ですわ。貴女は?』


『ふふ、キャロラインったら面白い子ね。ねぇ、私達、お友達にならない?』


『まぁ、キャロラインったら照れちゃって。よほど皇太子殿下のことが好きなのね!』


『酷いわ!キャロラインは別に悪いことなんて一つもしていないのに!ヴァネッサ様は嫉妬しているのよ!』


『私はキャロの味方よ。』




「あ、ああ!」


「お嬢様、どうなさいました?」



『確かに可哀想だけど。キャロと皇太子殿下との真実の愛を邪魔したのよ。ヴァネッサ様がああなるのも自業自得だと思うわ!』



「なんでアシュリーやねん!」


「お、お嬢様!どうなさいました?」




どうやら私は、生前にプレイしていたゲーム【君と歩むトキメキロード】、通称キミトキという、一部のユーザーしかプレイしていない、超ローカルゲームの中に転生してしまったらしい。



しかも、ヒロインの親友のモブ位置。主人公の恋愛無双を真実の愛ですべて片付けてひたすら味方であり続けた、ヒロイン肯定主義者。私から言ったらキチキャラ以外のなにものでもない。

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