テンプレで死んだら、たまったもんじゃない

第1話

「……は?」




気がつけば、天蓋付きのベッドの上で目を覚ました。先程まで見ていたのは、突っ込んでくるトラックの前部分。不意に見上げた先にいた運転手がまだスマホを見ていて、いやいやそろそろ気づけよとつっこみたくなったのを覚えている。


スマホは横向き。ゲーム中だなと考えるくらいには頭に余裕があった。



…死ぬのは、一瞬だったけど。



避ける余裕のないほどの速度で突っ込んできたトラックは、容赦もなく私を踏み潰したことだろう。


実際に激痛を感じたと思った時には、私の意識は容赦なく真っ黒に刈り取られていたから。



そして気がつけば、これ。



「ちっさ。」



手を見れば、明らかに小さい。周りを見れば、明らかに日本の匂いのする家具は皆無だった。



ベッドサイドの机の上には、ハンディベル。



「これを鳴らせば使用人とか来たりして。」



思わず笑いながらそれを鳴らせば、すぐさま部屋のドアがノックされた。



「ふひっ、はい!」


「…お嬢様?入ってもよろしいでしょうか?」



変な悲鳴を挙げた私を訝しく思ったのか、ドア越しに不思議そうにたずねて来る誰か。なんとか声音を取り繕って入室の許可を出せば、入ってきたのは予想通りというか、メイド服に身を包んだ年嵩の女性だった。

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