第52話

「しょうもない。おはようございますでしょ、ここは。」



寝起きで覚束ない指先で画面を触る。そのまま指をスライドすれば、予測変換の欄に文字の羅列が浮かび上がる。


その中からおはようございますを選択。


「あ。」


[おはす]



いつか間宮先輩にふざけて送ったやーつ。


「おおお、ああ?」


寝起きの指先がまた悪さをして送信ボタンを押しました。



「は、はや?」


取り消そうとしたところで秒で既読がつく。しゃ、社長さん?なにこの早さは?



[おはよう。]



ドン引きの私を前にもう一度?



お前の挨拶は失格だから仕切り直しみたいな?



[二日酔いとかなかったか?]



またはじめからおはようの挨拶を考え出す間もなく第二派が。脳裏をあの甘い笑みが過る。


[少し頭が痛いけど大丈夫です。]



ありがとうございますをつけようか悩む。いちいちメッセージを返すだけでこんなに悩む私よ。しかも社長の既読のつくスピードがエグいんですが。



[会いたいけど、今日はやめとこう。その代わりここでもいいから相手してくれるか?]



「初日からこれだと私もたないかも。」



甘い甘いメッセージに、胃もたれしてきた。

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