第50話
なんか、漫画みたいな展開になってきたな。
ひょんなことで知り合った主人公たちが、意気投合して契約婚やら契約彼女になっちゃう。そんな展開の奴。
ああいうの嫌なんだよね。結局好きになっちゃってさ。でも私達の関係は契約…。とかシリアスになっちゃうのよ。ライバルとか出てきて結局本当に付き合っちゃうみたいな展開になるまでが長い長い。
「はぁ。偽装彼女でもほしいなら他行ってください。私そんな器用じゃないので。」
そう言って先輩の飲み残しのお酒を煽る。失恋した直後だからかいつもよりお酒が苦い。従兄弟に捨てられた女なんて使い勝手がいいとでも思われたんだろうか?めちゃ胸糞なんだけど。
すると社長は、突然席を立つ。高身長の為見上げるのも億劫で。視線を合わせないまま先輩を見ていた。
「かんぱーい。あー美味しいー。うまーい。」
先輩。そろそろヤバいよね。
「え!」
「なになに?」
「うわ!プロポーズ?」
周囲が沸く。その視線を集中的に浴びている人物は、今まさに私の隣で片膝をついていた。
それを横目で見て、冷や汗ダラダラ。恐る恐る見れば、とろけるような甘い笑みを浮かべ、私を見ている。流れるような所作で手を取られれば、自然と体も向いてしまう。
「はじめから本気です。俺と付き合ってください。」
「かんぱーい。あー美味しいー。うまーい。」
真っ赤な顔で。だけど余裕の甘い笑みで。
どちらとも取れないチグハグなイケメンに…。
「…はい。喜んで。」
「かんぱーい。あー美味しいー。うまーい。」
私は陥落したのだ。完敗も完敗。惨敗である。
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