第46話

「でもさ、結局、相手が見つからない、わけ、よ?」


「でも先輩。美しいですよ。まだピチピチ。それも先輩は子供だけじゃなくて優しい素敵な旦那様もほしいって日頃から言ってるじゃないですか。だから、先輩?」




挫けそうになる先輩を私が励ます。これは劇団企画部の演目かい?的なテンプレートの流れに沿って”台詞”を口にしていると、先輩が目も口もかっぴらいて私の背後を見ているのに気づく。



不意に振り返ると。



「来ちゃった。」



神々しいほどのイケメンが、可愛らしい台詞を吐く。甘い笑顔で言うそれはなかなかに心臓に悪いものであるが、今の私は驚きでそれどころじゃない。



「ご一緒、いいかな?」


「もももも、もちろん!どうぞ!」



間宮先輩がもももも言いながら私の隣席の私の荷物をものすごい速さで自分の隣の席に移す。ついでに机の上の紙ナプキンで椅子も高速で拭くのだから、流石としか言いようがなかった。



「ふう。あ、すみませーん。」


「はい、いらっしゃいませ!」



居酒屋の女の子の店員が心なしか顔を赤くして弾ける笑顔で近づいて来る。うん、イケメンだもんね。分かるよ。



「ビールと、取皿一つ追加でお願いできるかな?」


「はい喜んでー!少々お待ちください!」


「よろしくね。」



社長の笑顔に、店員も近くの席の女性たちも釘付け。間宮先輩もホケーっとした顔でそれを見ている。うん、分かる。

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