第33話

「おはよー、ございまーす。」


「あ、おはよー。」


「はよっすー。」


「す。」



企画部に着くと、いつもの光景が広がっていた。お姉さん的存在で部のまとめ役である間宮まみやさんが笑顔で挨拶を返してくれて、いつもめんどくさそうにしているけど、仕事ができる厚木あつぎさんが抜けた声で挨拶を返す。いつもなんにでもめんどくさそうだけど実は溺愛してる20歳になる娘さんをスマホの待ち受けにしてて、時々デレデレした顔で見ているのを知っている。そして、私の2年下の後輩である金剛こんごうくんがほぼ「す。」しか聞こえない挨拶をする。



そして、この時間でまだ来てないのが加持かじ主任と天美千夏。



天美千夏は言わずもがな、加持主任は今年52歳になるおじさんだけど、年相応の色気を醸し出している敏腕イケオジだ。入社当時天美千夏がそれとなく狙ってた風に感じたほど、まだまだモテる。



加持主任にはエグいくらい色気のほとばしる和服美人の奥さんがいるから、天美千夏なんてスマイルで蹴散らしていたけど。



部で開いている花見の時に運転手らしき人にお重を持たせて颯爽と現れた時には、びっくりすぎて声も出なかったっけ。



『俺はしがないただの会社員だけど、嫁さんは日舞の教師をしててな。なんで俺なんかを選んでくれたんだって未だに疑問に思ってるくらいさ。』



なんて、お重を嬉しそうに突っつきながら話してたっけ。いや、それは貴方の色気のせいでは?しかも仕事できるし!と突っ込みそうになった新人の私。



できる男の所には、良い女が集まるのよ。多分。

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