第28話
「お、俺、話をっ。」
「待て待て。お前はなんでここにいるんだ?」
「…別に。彼女の家にいても変なことはないだろ?それこそ兄貴はなんでここにいるんだよ?」
「お前を連れ戻すために来たに決まってるじゃないか。そこで偶然彼女に会ったんだ。」
こちらに走ってこようとしていた夏生を制した社長の口からは、滑らかに嘘が滑り出る。違和感もないそれに、恐ろしさを感じる。百戦錬磨の敏腕社長って、恐ろしい。私とか馬鹿だから、すぐ騙されるわ。
やっぱり付き合うとか無理だと確信した。
「偶然?」
「迎えに来たら、たまたま彼女が車の前で困った様子でいるのを見かけてね。話を聞けば、家の場所を教えていないはずの
訝しげな表情の夏生に被せるように、畳み掛けた社長は、付き合っていた、という言葉をそれはもう強調してみせた。
夏生の頭の上にはハテナばっかり。浮気の罪悪感からか、さっきから情けない顔をしているけれど、今の状況をだいぶ訝しんでいる様子。そりゃそうよね。私もなんで今社長と一緒にいるか分からないもん。
しかも、社長は夏生を迎えに来たという設定らしい。従兄弟らしいから夏生を探すのはいいけど、だからといって夏生が今私の家の前にいるってどうやって突き止めたことにするつもりなのかな?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます