第29話

「…ん?なんで俺の場所が。」


「お前の居場所なんてすぐに分かる。」


「だから、なんで。」


「分かるんだ。」



おーい!この人、分かるで押し通そうとしてますけど!押し通る!で通じるのは鹿に乗ったあのイケメンだけですよ!この人も負けないくらいのイケメンですけどね!



親戚らしい夏生も、流石にドン引きしている。私にチラチラ視線を向けてくるけど、社長の圧のせいか、私に話しかける余裕がないらしい。



「もうこの女性に迷惑をかけるな。彼女はこれから新しい出会いをして、お前みたいなクズ男を忘れて幸せになる権利があるんだ。」



お年寄りみたいな発言をする社長の言葉には、色々な意味が込められているような気がした。けど、私は意味を汲み取らない。汲み取らなーい。


「例えば、誠実な男を拾ったり、とかな。」



と思ったのに、それを察知したらしい社長が意味有りげな視線を送ってくる。いや、誠実な男は拾えないでしょ。なに言ってんのこの人は。




ドン引きの私を前に、夏生がショックを受けた顔をしているのが見える。いや、なに傷ついてんのよ。あんたがクズなのは大前提でしょ。

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