拾ったら、責任持って面倒をみましょう。

第15話

車内は独特の雰囲気に包まれていた。と、感じているのは私だけなんだろうけども。



運転席では、まっすぐに前を向いて運転している社長。チラリと見てすぐ、窓の外に目を戻してしまう。



拾ってくれとキラッキラのイケメンに言われ、頷いた私は、『とりあえず、運転席を譲ってくれ。』と再度の要求にあっさりと助手席に移った。


私の中古ボロ軽自動車の運転席に、明らかに高級なスーツを着た社長が座る。座った瞬間漂った香りとボロと美の対象的なそれに気が遠くなりかけた。



社長はシートベルトをして、おもむろにスーツの内ポケットから財布っぽいやつを出す。だせぇ分厚さは皆無。おそらく万札とカードくらいしか入っていないそれからカードを出して私に見せる。


『運転はご心配なく。』



にっこり笑顔で言われて何度も頷く。そのカードはゴールドで、どう頑張っても手配書みたいな写りになるそれは相変わらず美しく、天上の人は運転免許センターの技術でも美しく写るのかと呆れさえ感じてしまった。




『君の家でいい?』


『え。』



ふわっと言われた言葉に、警戒してしまったのは普通、だよね?もしかしてこれだけのイケメンにそう言われたら何でも頷かなきゃいけない法律でもできてた?



慌てる私にイケメンは言う。



『そりゃ、拾ったからには最後まで面倒見ないと。』



納得してしまったのは100%彼の顔面力のおかげなんだけども。私は一体何やってるんだと、呆れしかなかった。

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