政治活動

行動を始めたのは、2009年も暮れに入ってからである。まずは、という乗りで動画共有サービスを2つ始めた。基本は、自己紹介と、自分の目的を話していくものである。

「なかなか・・」

恒武は、編集のたびにそう呟いていた。家は、少し大きめがいいと千聖がいうので、近所の一軒家を何とか購入した。その時に、彼の貯蓄がかなり減った。まぁ、減った分、かなり快適になったと自分に言い聞かせて生活している。

「再生数が・・・」

彼の動画は、かなり再生数が伸び悩んでいた。なんとか、YouTube、ニコニコどちらのサイトにも毎日投稿を行っている。編集も、ホテルのcmを作成した際のスキルを活かそうと躍起になっていた。しかし、再生数は、1動画当たり700~900、よくて1000程度である。コメントも、荒らしや、一コメばかりだ。

「どうしたものか・・・」

といっても、活動を始めて2か月ばかりである。今後も続けていくしかない。そう思い、投稿を終えると、彼は部屋を出ていった。


2010年に入ると、動画もぼちぼち伸びていき、支持者も増えていった。2月中ごろのことである。

「恒さん、ちょっと・・」

ダイニングで、ソファにどっかり座りながら新聞を読んでいるといきなり、千聖から話しかけられた。

「どうしたんだい」

恒武は、新聞を閉じると、聞き返した。

「実は・・。なんだか体の調子が悪くて・・・。これ、つわりなんじゃないかと・・」

恒武は、まさかと思った。子供ができた可能性があるのである。考えていて、想定した準備はいつでもできるようになっている。だが、気持ちの面では、あまりできていない。

「分かった・・。病院に行こうか」

検査によれば、妊娠15週目らしい。

「赤ちゃんも、健康みたいだね。よかった、よかった」

千聖は、帰りの電車の中で、笑顔でそう言った。

「そうだね。男の子か、女の子、どっちがいい?」

恒武も笑顔で答えた。

「やっぱり、女の子かなぁ」

千聖の笑顔を見て、恒武も、ふふ、と笑った。

電車は、宮坂駅へと前進している。

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