結婚と政治へ
1,東京〜新大阪
昔、政治家になろうと思ったことがあった。政治家になって、お金を稼いで大きな家に住もうという子供らしい、単純な理由だ。でも、今は、使命感に駆られて政治家になろうとしている。
「でも・・どうすればよいのか・・」
恒武は、物凄く悩んでいる。決断したは良いものの、彼には政治家としての経験もなければ、知識もほとんど無い。
「選挙は、3年後の2012年かぁ。間に合うかな」
彼は、家のリビングでゴロゴロしながら考えた。東京都知事選挙は、4年に一度である。前の選挙は、前年の2008年である。その時は、奥島広豊が当選している。彼の息子の広時も、都議会議員に日本民衆党所属で立候補し当選している。
俗に言う襲名というやつなのか・・恒武は、よく分からない。
「まず持って、どうやって俺をアピールすべきか」
とにかく、自分の存在を世間に知らせないといけない。
「あ、SNS・・YouTube・・でも、まだ成長途上だが、ニコニコより使い勝手が良い。これを使おう」
彼は、良い気分で眠りについた。
週末、彼は東京駅にいた。先日、婚約の挨拶を恒武の両親にしに行くことを千聖と約束していた。実家は大阪の寝屋川市にある。
「もう来てたんだ。恒さん」
「あ、千聖。思ったより早いね」
なぜだか、その後の連絡で千聖は恒さんと呼ぶようになっていた。
「お待たせ。じゃ、行こうか」
新幹線が東京駅を出ると、恒武は、携帯で調べ物を始めた。立候補に必要な年齢に関しては、次回の選挙には30歳を超えるから心配はない。問題は、金である。選挙活動が、金欠状態ではかなり制限される。選挙カーも使えないし、講演会も開けるほどの金もない。しばらくは、貯金に徹することになりそうである。
「恒さん、どうしたの?難しい顔して」
「あ、実は・・・」
彼は、あらかた千聖に教えた。彼女は、真顔でうんうんと聞いてくれた。
「まぁ、恒さんが出たいなら良いよ。しっかりやってね。子どもを作るにしても、私が面倒を一人で見ることに成ることも覚悟してたし」
彼は、千聖をもう一度見た。婚約者というより、母を見てるような気がしていた。
「次は、岐阜羽島 岐阜羽島です。お降りのお客様はご用意ください」
「あ、もうすぐだ」
彼らが話しているうちに、すでに名古屋を出ているみたいだった。
2, 新大阪〜寝屋川
新大阪駅から、寝屋川公園駅までは、学研都市線を使う。乗り換えを2,3回したらもうすぐだ。彼の実家は、打上元町の住宅街にぽつんとある。
「ただいま〜。久しぶりー」
恒武が勢いよく、ドアを開けて家に入った。
「あぁ、待ってたよ。おかえりんさい」
出迎えてくれたのは、70歳を迎えた母である。大阪府庁を退職してから、運動をしなくなったので、ふくよかになっている。
「おお、恒と千聖さんやね。いらっしゃい」
後ろには、すらっとした体型の父が立っていた。
テーブルの椅子に座ると、母がフルーツティーを出してくれた。
「前にも連絡したと思うんやけども・・・」
「私達結婚するんです!」
両親は、少し黙ったが、拍手を初めた。
「おめっとさん」
2人は、結構嬉しいのだろう。表情にもろに出ている。
「あんたも、もう結婚かぁ」
母は、感慨深そうだ。父も頷いている
3寝屋川公演〜宮の坂
千聖とは東京駅で別れた。どうやら、練馬の職場に旧に呼ばれたらしい。
「じゃ、今日はありがとね」
「うん、ありがとーさん」
彼は、大阪での癖が出てしまっている。関西弁は抑えているつもりだったが、未だに抜けていない。
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