第3話妖精さん…

光 「毎日楽しい♪」

鈴 「光、春の話を聞いて」

春 「あの、みんな聞いてほしいことがあるの」

水奈 「実は…自分たちの世界に帰らないといけないの」

光 「何で?」

光が真剣そうでもあり、何もわかっていないような表情で聞いた。

その透き通った菜の花色の目に少し寂しさを感じた。

やっぱり光はよく、分からない。

鈴 「うえから直接私たちに響いたみたいに…そう思ったの」

我慢できなくてすぐに私が聞いた。

春香 「えっどうやってかえるの?」

流奈が冷静に答えた。

流奈 「羽雲じゃないの?」

目を逸らした流奈の横顔には、キラッと光る涙が見えたような気がした。

なぜか直感的に怒っているように見えた。

春香 「悲しまないで、逆に現実世界こっちで預かってたら、酷い目にあいそうな気がしてならないよ」

知っている。なぜ酷い目にあうとわかるのか。

頑張って笑顔を作ったが、うまく笑えたのかわからない。

流奈が少し眉を下げた。

光 「そうだね!妖精さんだって帰んなきゃいけないもんね!」

簡単には帰れないんだ。私は知っている。

光も笑ったが流奈は私が笑ったときの顔と変えなかった。

きっと私も光みたいな不器用な笑い方をしたんだろう。

水奈 「帰りたいっちゃ帰りたいけど、私たちが来る前に喧嘩したでしょ」

春 「その争いの感情が私たちを帰らせない悪魔になったの」

やっぱり。知っている。

流奈 「…そいつを倒せばいいのね」

黙っていた流奈が口を開き、私が流奈の方を向く。

逸らしたままの流奈の瑠璃色の目が微かに濁って見えた。

鈴 「その悪魔を倒すには、魔法が必要なの」

春香 「ずっと…受け継がれた魔法の能力…?」

私はこの展開を知っている。お母さんから聞いたんだ。悪魔は2人いるんだ。お母さんが刺されたんだ。自転車で転んだって言ってた。けど、流奈のお母さんは教えてくれた。悪魔に刺されたんだって。悪魔がどうして倒れたかは、葉月お母さんが刺された衝撃で覚えていないって。言っていたんだ。

春香 「なんか、嫌な予感が…」

私はどうなるのか大体わかった。

恐怖に堪えながら。立ち向かおうと決意した。


ちょうど3年後

春香 「高校もおわりか〜」

涙を溜めて言う。

そういえば中学卒業のときもこんなこと言ったっけ。

流奈 「はるかっ」

流奈は涙を流しながら駆け寄ってきた。

光 「ここからいなくなっちゃうねぇ〜」

流奈 「寂しーよー!」

私は涙を流し、息を吸う。

春香「泣かないでよ。一生会えないわけじゃないしさ」

光 「とか言って、春香も泣いてるじゃん!」

気づかないうちに涙を流していた。

春香 「また遊ぼ、3人で」

せっかく最後なんだから顔くらい見ないとね。私は目を擦る。

2人がはっきり見える。何年も見た顔だ。

光・流奈 「うん!」

光 「絶対ね!」

流奈 「いつまでも親友だからっ!」

春香 「妖精も、卒業か…」


妖精に会いたいよっ!


6人で撮った写真に涙が落ちる。写真が光る。

写真に映っているのはもちろん私と、流奈と、光と、春と、水奈と、鈴だ。

あの頃は忘れない。いや、

春香 「これはっ」

バタバタ足音が聞こえる。

流奈 「はるかっ」※50m3秒

光 「流奈…早い」※50m5秒

2秒の差なのに…って2秒は結構ある…じゃなくて!

2人とも息を切らしながら駆け寄る。

ちょうど3年前を思い出す。

3年前って…


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