第12話 対峙する主人公
わたしの前に立つ彼女の姿がそこにあった。
その目は何事も受け入れないと拒むようで見続け難い。
「なんで、ここに来たんですか……?この惨状を見て何か思ったりはしないんですか?!」
「……。…こうなったらまた初めからやり直さないといけないものなの。もうこの世を気にしても無意味なんだよ…」
「無意味……ですか…」
友達が死んで、そんな状況で”無意味”なんて思えない。動じてない様子を見ればこの倒れたお姉さんと知り合いなのが考えてわかる。
「あなたもその…この人の、愉快な仲間たちの1人なんですか」
「全然愉快でもないし、仲間だとも思いたくないんでけど端から見ればそうかもね。あなただっておかしな状況だってわかるでしょ?この惨劇を見てどうこうとか言ってられないんだよ」
この人は話せば理解できる人間なのかもしれない。他の人はもう変えられない位置まで来ていてもこの人はまともに話せている。聞くならこの人しかいない。
「聞いてもいいですか?…わたし達は何に巻き込まれているんですか?」
「…わかった。話せることは話すよ。あとタメでいいよ。…一応、わかってはいるだろうけどわたし達は敵。今は平等に状況整理ができていない。だから普通に話す。」
「うん」
「華主いるでしょ?その華主って6人いるの。それらがわたし達を争わせているの。争うって言っても特殊なビームを撃てるとかじゃないよ?今みたいな感じで人間らしく…もっとも殺人なんて人のすることじゃないけど」
「なんで争わされてるの?目的とかなんかそういうのは…」
「わからない。だからこそ抗っているんだろうね。敵は身近にいる6人で、目的もわからず。わたしも聞いたことはあるけどはぐらかされたし答える気もなさそうだった。次あったら聞いてみるといいよ。」
人が殺しまでする理由それがあるなら。
「丁寧にありがとう。」
「うん。これで平等。いまからは敵だよ。可哀想でも同じ華主の加護でも…」
自分も抗わなければならない。いまから敵。
「い……ぁ…」
白い花びらが桜の腕に触れる。
「な…なに…」
「いまから敵なんですよね…だったら抗うんです…赤珠さんが行ったように……ぅあ…」
体内から押し寄せる吐血の感覚。前の世界、最後に受けた罰。その結末。
「…わたしがやったのそれ、覚えがあるでしょ?…て言ってもなにこれ…同じ殺傷の加護とは思えない、酷い大差…」
「……なんとなく気づいていたんだ…わたしの行くところ、そこで嫌悪を抱いた人間に傷がつく……最悪なことに友達でも検証済み。」
あめたそと遊んだ帰り道。その日ニュースになっていた連続通り魔。あの日みぃちゃんと喧嘩した後…。
なんとなくわかっていた。自分がそれに関与していたこと。
疫病神とかそんな迷信じみたことが頭に過ぎらなかったわけではない。
でも夢にみた花畑で自分がそうされたこと。
同じような被害であること。
殺傷の加護。
「敵なんだったら倒す。アニメでもそう。漫画でもそう。それが役目であり宿命。抗えない運命の襷なんだよ。」
「うぐぁっ…何いってんだお前…」
どうやったら会えるのか…聞くのを忘れていた。
「くはっ………はぁ……ああ…」
でももしこれが本当にわたしの役目なら間違ってないんだ。
わたし達の未来を考えるだけで胸が痛い。
「お前馬鹿なのか…正面対決とかそれで自分も生きれると思ってんのか」
流石にそんな馬鹿じゃない。状況把握できていてこの選択をした。
「…やられてばかりじゃ癪なんだよ…どうせ殺されるなら道連れにしてやる…」
「それが馬鹿だって言ってんだよ…!!」
青いこの世界、平和な国。そんな場所でも事件は起こる。
間違いであっても変なことは起こったり、作り上げられるものだ。
──
「あいつら死んだけどどうすんの?」
「え…あー、その」
「お前本当に役立たずだな。人を刺すくらいしろよ」
「ごめんなさい」
「またやり直しだなさくらも死んでその相手も死んで…なんも思わないの?」
「可哀想だなとかは思ってるよ…だけど。」
「うざ。行くぞゆず。そんなん言ってても解決しねえよ。」
「あ…うん」
─ ─ ─
抗う。守る。
言うのは簡単だけど実際どうする?
なごはわからない。
結局、自分が巻き込まれていたら必死に努力するけれどどこからどこまでって千疋しなければならない。
じゃないと一線を超える。
もし大好きな人が人を殺してしまったらあなたはどうする?
客観的に見た最善はもちろん“警察に追放する”ことだと思う。
次に世間体を見た回答が“一緒に出頭する”。
でも本当に大好きな人がそんなことをしたときにまともな判断ができるだろうか。
愛想つかすとかではなく“一緒に逃げる”。それが彼彼女にとって嬉しい選択だろう。
でも本当のところ、実際なってからじゃないとわからない。
それぞれ最善の判断をしていくのだ。
結局自分だけの人生なんだから主観で決めるべきである。
お互いの信念をぶつける。
対峙する主人公。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます