第11話 多いし酷いし傷心中っ
解散した後の帰り道。
純粋にみぃ達だけで解決できるのかなと考えてみる。
アニメみたいな状況だ。だとすれば新キャラ登場とか?なんて。馬鹿なこと考えてないで…。
いやーでも自分達でどうにかできる問題ではないし。
「やりこみ要素が多すぎるなー!もうわかんないっ!!」
一つ確かめて一回死ぬ未来を仮定するとあと16、7回しか試せないわけで。
そんな回数制限の縛り設けてゲームやってきてないし。
「うーん」
そんなとき声を掛けられた。
「ねね」
「あ、はい!なんですか!困りごとですか!!」
声のした方向へ振り向く。
そこには地面につくほど長いツインテールの女の子がいた。ミョルニルハンマーみたい。
赤紫と桃色の間みたいな綺麗な髪色だ。
「可愛いですね!」
「あ、ありがとー。いや、そうじゃなくて。峰山椿って名前のお友達いる?」
「え…さっきまで一緒にいましたけど!もしかしてつばきちの知り合いですか!?」
「あーそうなんだね。その子さっき死んだよ。」
不意な訃報に言葉を失った。
さっき元気になったばかりのつばきちゃんがものの数分、数時間でその状況と化していることに動揺を隠せない。
この短時間で、そんなわけがない。聞き間違いだろう。きっと。
「もう一度名前を聞いても…」
「峰山椿ちゃんでしょ?多分間違ってないと思うんだけど…」
「どこですか?犯人を見たりしましたか?そんな感じの人でも…少しでも情報を…」
許せない。
ここから再起して皆で頑張ろうと決めたのに、決めたばかりなのに。
どこの誰かも知らないやつに。
「犯人は私の愉快な仲間達だよ。あなたは確かみぃゆちゃんだよね。さっき来るとき聞いてきた。」
…この人の仲間が…この人が…さっきやっと元気を取り戻したばっかのつばきちゃんを…
「…許さない」
「まあ普通はそうなるよね。でもあなた達も私達も選ばれちゃったからしょうがないんだよ。」
「しょうがないわけないでしょ。」
しょうがない?人を殺しておいて?敵前逃亡の言い訳ですか。なにがあっても許されるべきではないんだよ。
いくら皆復活できようが、回数制限があるわけで。死の苦しみを味わうわけで。
「まあまあ。落ち着いて。だってどちらかが動かないと酷い未来が待ってるんだもん」
「友達が殺されて落ち着いていられるわけないでしょ!」
オムライスを頬張っていた姿が脳裏に浮かぶ。
みぃの余計なきゅうりまで食べてくれて。
もし本当に殺されたんだとしたら…
「選ばれたってどういうことですか?」
「知らないの?まだ会ってないのかな。神様みたいな人が私達を選んだの。だからそれに抗うことはできない。」
「具体的には何をすればいいんですか?」
「それは私も知らないし、一応あなたは敵だから教えるわけないよ。」
「その神様みたいな人にはどうしたら会えるんですか?あなたは誰なんですか?つばきちゃんを殺した人の名前はなんですか?」
「え、えーっと…神様みたいな人はそもそも名前があって、あなたの神様はわたしtぅ…」
そいつの鳩尾を思い切り殴る。
いまは殺したほうが身のためであり、これは正当防衛。罪になるはずない。
自分の友人が殺されてその仲間がすぐ真横にいるなら殺すだけ。
「うっ……どぅ…」
善だ。
目の前に指名手配者が居たら通報する。
警察が殺害現場を見たら取っ捕まえる。
勇者が魔王を倒す。当たり前のこと。当然のこと。何も悪いことじゃない。
「…………」
品行方正なんだ。
自分は正義感に駆られているのでも敵討ちをしたのでもなく正しい行いをしただけ。
頭に血がのぼったとかそういうのじゃなく、ボランティアのようにやったほうが良く思われる行動であり…
殺人がすべて悪いわけではない。
──
二つの人形を目の前に鑑賞するだけのわたしがそこにある。
「…」
ひぐらしのなく声も風の音さえしない、湿った空気だけが残る空間。
ただ声一つも聞こえないそんな黄昏時に新たなスタートラインが始まる。
「寒白 菊。探したよ。」
わたしの名前と共に希望の一言が添えられて、もしかしたら希望に成りえそうな言葉を無理やり拾って。
やっとの思いで目線を見上げればそこに”髪色も髪留めも桜”の女の子と紫掛かった空がある。
「あなたは…誰」
「わたしは『赤珠 桜せきじゅ さくら』。あなたと同じ八重咲の加護の童。」
その目はあまりに残酷でわかりあうことはなさそうだ。
─ ─ ─
誰にだって嫌な思い出はある。
なごだって人の嫌な思い出を知りたいわけじゃない。
でも選ばれてしまったならそれには抗えない。
でも人の経験したことを知れてもその目線とかを見れる訳では無いし。
なんせ嫌な思い出だけ。
不幸の象徴だって崇められてもしょうがない。
こんな役目……世の不幸の数だって…
多いし酷いし傷心中っですっ!
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