第7話 応援は高い雪より




そこは神聖な場所。


大きな神社のようなもの、神社を囲うようにクチナシの花壇がある。




「ここは…神社…?…うぅ…」




お昼ご飯を食べていたら急に酷いくらい苦しくなって視界が消えて。


かと思えば夏祭りに戻って。


正直意味がわからないのにさらにこれって。何がどういうことなんだろう?


そんな中、少し前から声がする。




「やっと来たね飴ちゃん」




待ちわびたような明白な声が耳を撫でる。




「え…?だ、誰っ?」


「余は『梔子 祓 しし はらえ』。君の華主だよ。」




そこには1人の女の子がいた。


薄群青色の髪の巫女っぽい服装の子だ。


私達と同じくらいの年齢に見える。


奇妙な場所に私とその女の子。




「華主…ってなんですか」


「えっ知らないの!?まだ誰も話してないのか……いーや会ってない?」




「ここはどこなんですか?あなたはなんで私の名前を?」


「んー、簡単に言えば最近の君たちの…いやー、君ともう一人の付き人というか救いの手というかサポート役?みたいな感じかな。」




「…どういうことですか?もう一人は誰なの?結局何なの?」


「まだ会ってないなら言わないほうがいいかな。でも余は君たちのほうを応援してる!だから君にひとつ助言をしてあげよう。」




「…助言?」


「うん。君だけは冷静でいること。君たち5人はそれぞれ重要な役割があるかけがえのない存在なんだからね。」




「…君たちってことはほかにもいるんですか?」


「金髪ツインテールちゃんとかね。いつも飴ちゃんが一緒にいる子たちだよ。」




「そうなんですか。」


「そろそろ時間かな。ここにいられる時間は限られているからまた次あったときに話そ!」




「え、あ…」




次の声を掛ける暇もないまま真っ白に閉じていく。


夢から覚めるように。


信じれるものは信じる。それが今できることなのかな。









「つばきちゃんの説得かー」




「まあ説得といってもまだなにも知らないんだけどね~」


「絶対みんな関係あるし!早めになんとかしないと!!!」


「そうだねー*」




つばきちゃんの家に向かうわたし達はどう話せばいいかを考える。


ひとりだけとびきり様子がおかしかった、そんなつばきちゃんを短時間でうまく丸め包もうなんて無茶な話だ。




「突然なんだけど皆は夢なのに凄い覚えてて現実みたいだな…ってことある?」




「えーなにそれー」


「わかんないし聞いたこともない!!!」




過ぎていく毎日に置いていかれた不幸。大切なピースの欠けたパズルのような状態。


当たり前だった日常を忘れて前を向くか、これまでの日常と一緒に前を向くか、今のわたし達にはそのどちらかしかない。


わたし達にとってどちらが幸せか。




「都市伝説かなにかー?」


「い、いやそういうわけじゃないんだけど最近噂でね」


「へー!」




そんな他愛もない話をしていると峰山家の前に到着。


呼び鈴で出たのはつばきちゃんのお母さんだった。


話を聞く限り体調不良で引きこもっているとか。それを先に聞いたわたし達はお見舞いに来た、と食べようと思っていたお菓子を見せつける。


「そうなの。ありがたいわ」と言いながら玄関に通してくれるお母さんにはちょっと悪いなと偽善者のような視線で見返す。




「つばきち大丈夫ー?」


「ちょっとなにそのあだ名!!」


「静かにしなね~一応本当に体調不良だったら迷惑になるし~」




「つばきちゃーん*」




ドアをこっそり開く。


そこにはぐったりとした人物が居た。まるで知らない人みたいな顔に疲れが明らかにうつっている。


こんな状況の人物に、「一年前に戻っている」とか「前世界線?の話」とかを持ち出しても精神への攻撃になるだけ。


いまは言うだけ無駄なのだ。と、論理的思考になるのは冷静の象徴だからいいとして引き下がってもいられない。


実際、わたし達に実害が出ている。どうしたものか。




「つばきちゃん~体調大丈夫~?」


「うん。体調どうこうっていうか。その…。」


「…」


「つばきちゃん!それをどうにかしないとこれからどうなるのかわからないんだよ!!」


「…。」




気持ちはわかる。


そんなこと言われても知らない人からすれば「なんのこと?」で終わりだし、知っていたとしてもぐったりしているときに言われれば無視をして聞き流すこともある。


客観的に見たらこれは一種の水掛け論のようなもの。


最善の選択は時間をあけること。


そんな気がする。




「とりあえず今日は帰ろう*」


「そうだねー…」




「良いお大事に」とつばきちゃんに一言放ち、そこで解散となった。


解決方法のない議題の討論をしても意味がないことは誰にでもわかる。


それがこんな非現実的な事例となれば大人子供関係なく結果は同じ。




「また明日とかにー」


「ばいばい!」


「気をつけてね~みんな」




頭を使っても公式がわからない。


なら学者のたまごとかでないと何も進まない。




「…じゃあねっ、また*」




誰が私達を応援しているかはわからない。


遠い国の子供が世界中のために願っているのかもしれないし、隣の席の子が平和を祈っているかもしれない。も


し天国があるのならきっと優しい人が、いま生きている人たちへ願っているのかもしれない。




応援は高い雪より


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