第6話 布団の誘惑
それは現実世界のこと。
経験したこと。
どうにもこうにも引き離せない事実。
他人は知らない、魔法のような日々は全て夢じゃない。
「じゃ私の用はなくなっちゃったね~…おんなじこと聞こうと思ってたから」
「そっか。でも…なんか冷静だね。良かったけど」
「冷静じゃなきゃ話は進まらないからね、私だって混乱してるし~、なんならきくちゃんこそアニメみたいだって喜んでると思ってたけど…」
「実際真に受けるとね…どうすればいいかな」
「そうだね~まあ、ほかの3人もどうにかしないとね」
そうだ。
こうなってる人間に心当たりがある。それも3人いて。
状況を見るにつばきちゃんは最後がいいだろう。夏祭りのときはいつもと比べ様子がおかしかった。途方に暮れた顔で俯き道を見るのが精一杯といったように、そんな様子だった。
みぃちゃんが一番わからない。あのときは普通に見えたけれど。
あとは…
「最初はももちゃまにする…?」
「それがいいかもね~」
「…じゃあ明日の昼でも」
わたしは多分出血多量で死んだのだろう。
だとすればほかの皆はどうなんだろうか?
自分が一回死んで、それだけ苦しい思いをしておいていつもの通りというのはおかしい。自分だけが死んだのか?
「明日聞いてみよ…」
──
お昼の1時。萌実家前。呼び鈴を鳴らす。
「はーい*お、きくちゃんとつばきちゃん。どうしたの?*」
「ちょっといま時間あるかな?お話したいことがあるの~」
つばきちゃんがそういうとももちゃまは「いいよ*」と簡単に聞き入れわたしたちを玄関にあげる。
階段をのぼり甘い匂いのする部屋に通された。まあこんな感じなんだろうなって部屋だ。異常に枕が多い。
それはそうとももちゃま含めあめたそにも聞くことがあるしちゃんとしなければならない。
「早速なんだけど…ももちゃまさ最近なんかなかった?」
「んー基本ずっと寝てるしねえ*夏祭りに行ったくらいかな*」
「じゃ、じゃあその時なんか感じなかった?」
「普通だったよ?*」
「そっかー」
まさかだけど、ももちゃまだけ経験してない?いやそんなことは…
まあそう考えれば1人だけ冷静だったのも頷けるけれど。
「あー*でも怖い夢は見たかな。お母さんと話してたとき急にもも倒れちゃってー*」
「そ、それってなんの話だった?」
「えーっと……みぃちゃんがいなくなっちゃったって話…?*」
「あ」
それは夢じゃない現実だ。
ここではなくまた違う場所で起きたしまった事実。
夢だと勘違いしていたからこそ冷静でいられたということか。
納得したわたしはももちゃまに今の日にちは?と促す。一年前だ!なんて顔をしているももちゃまとはべつに、横にいる人間に尋ねてみる。
「あめたそはなんで冷静にしているの?」
「昨日いった通りだよ~。周りのためにも自分が冷静じゃないとね~」
「さすがあめたそー*」
賑やかにする二人を見て、微笑ましいとニコニコする自分に対し久々に笑ったなと感じる。
しかしこれからが重要だ。あの二人をどうにかしなければならない。
そんな中呼び鈴が鳴り聞き覚えのある声がした。
ドタドタと階段を駆け上りバンっと部屋のドアが開く。
「やー!みんなー!!!」
見慣れた金髪ツインテールだった。
「どーせ!皆はわかってるんでしょー?これが異常事態だ!ってこと!!」
「み、みぃちゃん!?」
「ふっふーんみぃは凄いんだから!!!!でこれはどういうことなの??」
まだ何もわかっていないこと。前世界線?での話。つばきちゃんにはまだ話していないということを簡単に話した。
「どうしたら話せるかな~?」
「そんなの会ってから考えるのよ!!行こっ!」
欲というのは怖いもので低下が進めば最期、人としてはいられない。
そんな欲にも種類がある。主に話すのなら3大欲求の1つである睡眠欲。
ももちゃまは睡眠欲と食欲の権化みたいな感じだが普通の見た目をしている。それどころか可愛い。
だけど他にも欲は人を操り1種の依存状態にさせる。
人をいじめる悪魔のように非道な欲だったり。
そんなものが世界に塗れているのに必死に生きる生命という存在はとても可愛い。
冬の朝は布団から出たくない。
これが寒いだけだったら普通だろう。
でも外に出たくないんだったらそれも1つの欲であり、1つの要因だろう。
自分の意思がすべてを左右するのである。
布団の誘惑。
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