第7話

 放課後になっても、ドッペルゲンガーは現れなかった。多分、まだわたしの中で答えが出ていないということだろう。

「碧ー!一緒に帰ろっ♪」

この事件の発端とも言えるエミリは、未だ何も知らない。わたしは精一杯の笑顔で頷いた。


「次の彼氏はどうしよっかなぁ。碧はどう思う?悩んでるのは4人いてさ」

こういうのがまた変なケンカを買うってこと、そろそろ覚えた方がいいと思う。

 そう思いながら、手に持っていたクレープにかぶりつく。

「エミリ的には誰がいい感じなの?」

どうせこんなの聞いたって意味ないんだろうけど。まあ、一応聞いてみる。

「えー、いい感じかぁ。剣道部のキャプテンかな。イ先輩なんだけど、イケメンだし女子からめっちゃ人気だから!」

話を聞いていても、エミリが決していい人だとは思えない。でも、死んでほしくはない。

「そうなんだ。あ、わたしこれから塾だから!バイバイ!!」

答えが出た。わたしは適当な理由をつけて、エミリと別れた。


『答えが出たのね』

家に帰ると、玄関の壁にドッペルゲンガーがもたれて待っていた。あんな言い方をしたのは、わたしが出す答えがわかっていたからだろう。

『で、助けるの?助けないの?』

「助けるよ。エミリのこといい人だとは思わない。でも、それでも、友達だから」

『…あんた友達少ないものね。あの子いなくなったら1人になっちゃうわけだ』

うっさい。

 ドッペルゲンガーが、わたしに憐れみの目を向ける。それをイラッとしつつも流して、靴を脱いで階段を上がった。

『助ける方法は、2つある』

わたしは椅子に、ドッペルゲンガーはベッドに座って話を始めた。空が曇ってきて、今にも雨が降り出しそうだ。

「…待って。助ける方法って、こういうのは結構あるものなの?」

そもそも、何をどう助けると言うんだ。

『まあ…あるっちゃ、あるわね。で、話すけど。1つ目は、伊上をこの世から消す。もちろん、殺すわけじゃないから。あいつ自身、存在しなかったことにしちゃうの』

なんかよくわかんないけど、とても現実にありえるとは思えない。

 わたしは眉を寄せた。

『2つ目は、あんたとあたしが死ぬ。今日1日探ってみたけど、伊上はあんたの方に惹かれてるっぽいわ。…だからまずあんたがいなくなれば、伊上に見えてるドッペルゲンガーもわかるでしょ』

伊上先生を消すか、わたしとドッペルゲンガーが死ぬか。

『残酷なことを言うようで悪いけど。もし伊上を消すなら、それ相応の代償を払わなければいけなくなるから。そこをわかった上で判断しなさい。あたしは、あんたがちゃんと考えて選んだことには絶対に反対しないわ』

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