第6話

 授業も半分が終わった頃、さっきまでどこかに行っていたドッペルゲンガーが戻ってきた。

『あのエミリって子、狙われてるわね。伊上先生の方は、あの子と付き合ってたのは遊びのつもりだったみたい。でもそのドッペルゲンガーが、まだエミリのこと好きだと思ってるのよ。…とにかくこのままにしておくのは危険』

急に戻ってきたと思ったら、何を言い出すんだ。わたしは話についていけなくて固まる。

 まず、ドッペルゲンガーはその人物の思考がテレパシーで読めるんじゃないんだっけ?ドッペルゲンガーの言っていることが本当なら、その設定とは異なっていることになる。

『―要は、あの子が伊上のドッペルゲンガーに狙われてるって言ってるの。しかも近いうちに何か起こるわ。それと、たまに例外もいるの』

エミリの方に顔を向けると、頬杖をついて窓の外を見ている。伊上先生は教科書を左手に持って、板書をしていた。

『助けるかは、あんた次第ね』

エミリはギャルとまではいかないけど、結構パリピ系の子で。おまけに可愛いから、男なんて引く手数多な感じだった。それに軽くノリで付き合っちゃったりもして、何度元カレ達からケンカを買ったことか。…でも今回のは話が違う。今までのとは比べ物にならないほどヤバい気がした。

「そのままにしておいたら、どうなるの?」

聞き取れるかも怪しいほどの声でドッペルゲンガーに聞く。

『多分…いいえ、確実にあの子は死ぬ』

一気に血の気が引くのがわかった。どうすれば助けられるんだろう。なんでわたしは友達のためにこんなにも一生懸命になっているんだろう。助かる方法はないのか?矛盾だらけの思いが、体中を巡る。

『少し、ゆっくり考えなさい。答えが出たら、助ける方法を教えてあげるから』

そう言って、ドッペルゲンガーはまた教室から出ていく。わたしはその場に1人取り残されたような気がした。

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