助ける方法

第5話

 体育が終わってからの着替え中、突然ドッペルゲンガーは言った。

『あんた、あの友達気を付けたほうがいいわよ。隣のクラスの担任…伊上に、厄介なドッペルゲンガーが見えてる』

 何それ、どういうこと!?

『まだどんなのかはわからないけど、何か…感じたのよ』

 いつになく真剣な顔で言うから、最初は信じられなかった。でも、疑う理由もない。わたしは、その言葉を信じることにした。

「碧、早く行かないと次の授業遅れちゃう!」

 エミリに言われて、わたしは急いで制服のボタンを留めた。


 教室に入ってから気付いた。次の授業、伊上先生だ。

『さっき言ったこと…忘れてないわよね?』

わたしは小さく頷く。いつもの高い声じゃない低めの落ち着いた声は、ドッペルゲンガーのイメージには合っていなかった。

「はーい、授業始めるから座ってください」

いつの間にかチャイムは鳴り、授業が始まっていた。一瞬伊上先生と目が合って、気まずさを感じながらも会釈をする。すると、伊上先生も気まずそうに軽く頭を下げた。

『ちょっと、見える?“アレ”』

 ドッペルゲンガーに言われて伊上先生の周りに目を凝らすが、特にこれといったものは見えない。

『見えてないの!?』

伊上先生の右側に、なんか黒い影みたいなのが見える気がしないでもないけど。

『そうそれ!時間が経てば、あんたもはっきりと見えるようになるわ』

てか、ドッペルゲンガーって他の人には見えないんじゃなかったの?なんでわたしは見えるようになるわけ?

 わたしはそっちの話に夢中になっていて、全然授業を聞いていなかった。

『自分のドッペルゲンガーが見える人には、他のドッペルゲンガーも見えるのよ』

ふ〜ん、べつに見えても嬉しくないけどな…。

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