第3話

 次の日の朝、起きてもそいつはわたしの隣にいた。

『おっはよー♪随分と面白い夢を見てたわね!ああ、楽しかったーっ!!』

 朝からこの無駄に高い声はキツいなぁ…。頭にガンガン響いてくる。

あおいー!早く起きなさいっ!今日月曜日でしょ、集会あるんじゃなかったのー!?」

「あー…はいはい。今起きるー!」

 壁に掛けてある制服を着て、ジャケットの襟を正しながら階段を降りる。後ろからは、わたしのドッペルゲンガーが鼻歌を歌いながら付いてきていた。

『今日はママの特製フレンチトーストなのね〜!いい匂い♡』

 ドッペルゲンガーは、目を輝かせながらわたしの皿の中を覗き込む。

「あげないよ?」

「何を…?」

 ホットココアの入ったマグカップを机に置きながら、ママが不思議そうに言う。

 しまった…!ママにはこいつの姿が見えてないんだ。

「いや、なんでもない。いただきまーす!」

 なるべく平静を装って、フォークを手に取った。

『もう…バカねぇ。いちいち声なんかに出しちゃって!』

 しょうがないだろ。昨日の夜急に出てきてまだ慣れてないんだから。

 わたしは少しムッとしつつ、フレンチトーストを口に運ぶ。

『学校では、ボロを出さないように、気を付けなさいねー♪』

 ドッペルゲンガーは、そう言うと軽い足取りで階段を駆け上がっていく。わたしは邪魔なやつが、一瞬でも消えてくれたことにホッとした。

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