第11話
灯と聖が寝た後、君と2人で家族のアルバムを見た。
「灯…ちっちゃいね」
「うん。産まれた時は本当に感動して、それと同時にすごく嬉しかった」
アルバムを見ながら君は「私が産んだんだよね…」とつぶやく。思い出すことはできなくても、灯と聖のことをもっと知ってほしい。そう思ってアルバムを見せた。
「可愛っただろうなぁ」
アルバムを持つ手は、昨日と比べるとだいぶ薄くなっている。
「そろそろ寝よっか。灯は明日も朝から夏期講習あるし」
君は何かの思いを断ち切るようにパタンとアルバムを閉じた。
「うん」
その日は、布団に入ってからもしばらく眠れなかった。
次の日の朝、目が覚めると隣に君がいなかった。
慌てて階段を駆け下りる。まだ6時前だから灯も起きていない。
「頼ちゃん!?」
叫びながらリビングのドアを開けると、座って昨日のアルバムを見ている君がいた。君は驚いたようにこちらを見る。
「なに?湊くん」
「いや、だって、起きたら隣にいないんだもん。ついに俺も見えなくなったのかと思うじゃん」
安心して大きく息を吐く。
「ごめんごめん、なんか目が覚めちゃってさ。そしたら急にこれが見たくなっちゃった」
そう話す君の手は、昨日よりもまた少し薄くなっていた。
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