第6話
灯が帰ってくるより先に仕事を切り上げて、聖を保育園に迎えに行ってから家に帰った。
「おかえり。湊くん、聖」
「ママ、ただいまぁ〜!!」
灯が帰ってくるまで、おそらくそこまで長い時間はない。
「ねえ、湊くん。この絵も灯が描いたんだよね?」
リビングには灯が描いた絵が何枚も飾ってある。描く度に聖が「かざって!かざって!」と駄々をこねるからだ。
「そうだよ」
リビングに飾ってある絵は、君が飾った物の方が多い。
「すっごく上手だね。私この絵が1番好きかも」
そう言って立った前には、灯が初めて絵の具で描いた絵が飾ってあった。誕生日に貰った絵の具が嬉しすぎて、ずっと絵を描いていた。
「他のやつより色の塗りは荒いし所々はみ出てるところもあるけど、1番絵を描くことが好きっていうのが伝わってくる気がする」
生前の君も飾ってある絵の中であの絵が1番好きで、同じことを言っていた。
「ただいまー、お父さんも聖ももう帰ってきてるんだ。早いね」
灯が帰ってきた。そしてこちらに気付くと、鞄をその場に置いてものすごい勢いで歩いてきた。
「もしかして、お母さん…?」
抱きついたが感触がないことに驚いたのか、灯はすぐに1歩後ろに下がった。
「そうだよ、って言いたいけど。ごめんね、私灯のことなんにも覚えてないの」
「えっ…!?ん?ちょ、一旦ストップ!お父さん、説明を頼んでも?」
状況を上手く理解できず、灯は俺に助けを求める。
命日の夜にこの世に戻ってきたことから、自分含め俺以外のことを何も覚えていないことまで全てを話した。
「…で、思い出す方法を探そうってこと?」
お腹が空いたという聖にお菓子を渡しながら灯が言う。
「そういうこと。協力してくれるか?」
「もちろんでしょ!」
今日から、君の一時的に忘れている記憶を思い出すためにいろんなことを試し始めた。
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