最後に

第24話

 病院に戻ってから、急に右胸が痛むようになった。丁度しこりがある辺りだ。

「痛い、痛い、痛い、痛い…!」

私は佑紀君に背中をさすられながら、大きな声で喚き散らかした。声に出しても痛みは全然引かなくて、痛み止めまで使用を開始した。

「ちょっと、行ってくるからね」

お母さんと佑紀君が先生に呼ばれた。本当は私も呼ばれていたけど、先生からの話なんて聞きたくなかったから。2人だけで行ってもらうことにした。私は少し痛みが引いたように感じて、気を紛らわせるためにも読みかけだった本を開く。しおりがベッドにヒラヒラと落ちた。


戻ってきた2人は、泣きそうな悔しそうな顔をしていた。

「なんて…言われたの?」

私は聞くが、本当はそんなの聞きたくなかった。佑紀君はそれをわかっていたように、話を変える。

「――今は、どんな本を読んでるの?」

佑紀君は私が本を読んでいると、内容を知りたがる。いつも通りの質問。それが今の私には少しありがたかった。

「勇者達が、魔王を倒しに仲間と冒険に出る話」

簡潔に、でもわかりやすいように内容を伝える。佑紀君は興味を持ったのか、「読み終わったら俺にも貸して」と言ってきた。

「どうしよっかな〜」

「えー、貸してよ」

そう言って私とふざける佑紀君の表情に、曇りは一切なかった。


夜になると、昼間とは比べ物にならない痛みが私を襲う。声も出なくて、ただ薬が効くのを待つだけ。消灯時間を過ぎているから、隣に佑紀君はいなかった。

「助けて…」

弱々しく吐いた私の声に、返事はなかった。

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