再発
第13話
おばあちゃんのお葬式が終わってすぐ、渚はアメリカに戻っていった。やりたいことが見つかった渚は、いつも私の後ろにくっついていたあの子にはとても見えなかった。
「俺、結局最後まで嫌われたままだった…」
佑紀君は結構そのことを気にしていたりする。
「そんなことないと思うよ?だって飛行機に乗る前、『佑紀さん、結構いいじゃん。この前はごめんなさいって言っといて』って言ってたし。本当に人見知りしてただけだって!」
私はソファに座って、ココアの入ったマグカップに口を付けた。テレビでは、有名な俳優さん達が出演していると話題のドラマがやっている。
内容は観ていないから知らないけど。
「あ、この女優さん若いのに人気だよねぇ。名前何て言ったっけ?」
「えっと…
佑紀君もマグカップを持ってきて、私の隣に座った。
確かこの女優さんってまだ高校生なんだよね。
「私この俳優さん好きだなー」
前に人気女優さんとの熱愛報道で騒がれてたような気もするけど。
「あー、
佑紀君がチラッと私を見る。
これはもしかして…妬いてる!?
「そんなわけないじゃん!私には佑紀君がいるんだしさぁ」
この時の私達は、半年後から始まる悪夢を知る由もなかった。
再発というのは、こんなにも私を不安にさせて、恐怖を植え付ける。それに私だけじゃない。私の周りの人達にも心配をかける。
「ねえ、佑紀君。また…なっちゃったかも」
佑紀君は驚いたように目を見開いた。時間が止まったように、佑紀君は一時停止する。
「また…って、再発ってこと?」
「うん…。そうかもしれないの。ここにね、あの時と同じようなしこりがあるの」
半年前と同じ、左胸のところだった。抗がん剤治療から通院治療になって、最近は順調に結婚式の準備も進んでいたのに。私は悔しさと申し訳なさでいっぱいになって、その場に泣きながら崩れるように座り込んだ。
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