第2話

 私矢川歩やかわあゆむには、付き合っている人がいる。藤野佑紀ふじのゆうきという人だ。同じ大学2年生なんだけど、彼は高校卒業後スイスに2年留学していたから本当は2歳年上。優しくて穏やかで芯のある、しっかりとした人だ。

「じゃあ、あゆとゆう君の子供は、優しくて素直な可愛い子が生まれるんだろうねぇ」

いつも大学では一緒にいる、槙原智菜まきはらちなが言う。

「ちょっと、どんだけ未来の話してんの?」

「まあ…別れたら子供なんて関係ねぇよな」

もう1人のいつメンである桐崎帆貴きりさきほだかも、話に入ってきた。佑紀君は今レポートを提出しに行ってて、ここにはいない。

「あんたはいつも一言多いんだよ!」

智菜が帆貴の頭を重いっきりグーで殴る。智菜と帆貴は同じ高校出身で部活の部員とマネージャーだったということもあり、遠慮というものはまずない。

 この2人、いい感じだと思うんだけどなぁ。気分屋な智菜と結構俺様気質な帆貴。

ケンカップルって感じになりそう。お互いに意識はしてないっぽいけど…。

「歩ちゃん、1人の世界から帰ってきて」

「お!ゆう君おかえり〜」

佑紀君は「ただいま」と言いながら私の隣に座った。私と佑紀君が付き合っているということは、智菜と帆貴も知っている。その時、私の携帯の着信音が鳴った。

「あ、お母さんだ。ちょっとごめん」

滅多に電話をしてこないお母さんからの電話は、少し嬉しかった。ワクワクした気持ちで電話に出る。

「もしもし、お母さん?」

『歩、おばあちゃんが入院しちゃったの…!』

電話の向こうから聞こえるお母さんの声は震えている。おばあちゃんは元々心臓に持病を抱えていた。でもそれはべつに問題ないと言われていたのに、どうしてこんな急に…?

「入院って…でも軽いやつでしょ?」

どうか、そうだと言って…!心の中でそう祈る。

『そのことを話すから、今すぐ病院にこれない?できれば、佑紀君も一緒に』

「佑紀君も…?どうして?」

『あなた達の将来に関係してくるからよ』

つまり、このことで私達の結婚が早まるかもしれないということだろう。

「わかった。すぐに向かうね」

電話を切り、私は急いで佑紀君とおばあちゃんが入院する病院に向かった。

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