第3話

 私のクラスはいつも騒がしい。良く言えば賑やか、悪く言えばうるさいってところかな。私は楽しいからべつにいいんだけど、授業で先生によっては怒られるのが少し面倒くさい。

「おはよー、聖夏!今日も仲いいねぇ!おしどり夫婦かよ〜」

 机にカバンを置くと、前の席の牧野穂南まきのほなみが椅子の背に手をついて話しかけてきた。

「いや、幼馴染みで家が隣だから一緒に登校してるだけ…!」

「あれ?奥さんお顔が赤いですよ?」

「き、気のせいだから!それと充玖に聞こえてたらどうするの!?」

 充玖を目で探して聞かれていないことを確認する。

「アハハ!大丈夫だって!ゴメンネ〜」

 こいつ絶対反省してないな、と思いつつカバンから教科書やノートを取り出す。

 …げっ。今日数学のノート点検の日だよ。板書はちゃんとしてるけど問題がなぁ。間違い多いから直しと、どこで間違えたのか後でちゃんとメモとらないと。数学ほんっと無理なんだよね。充玖に教えてもらおう。


 うわぁ。次の授業移動だし家庭科って…。背面黒板を見てため息をついた。

「せーなっ!ため息ついてると幸せが逃げちゃうんだよ?スマイル!!」

 机に突っ伏していると、充玖が私の家庭科の教科書とノートを持って机の横に立っていた。

 私ってなんてゲンキンなんだろう。顔を上げると同時に自然と口角が上がっているのがわかる。

「さ、行こう?」

 充玖がゆっくり手を伸ばしてくる。

「フフ、朝の反対だね。ありがと!」

 その手を握り、勢いよく椅子から立ち上がる。教科書とノートを受け取っていつものように隣に並んだ。不思議と嫌な気持ちは消えていた。

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