第7話 傷跡

 龍顎駅電車に乗り、龍顎北駅を降り、しばらく歩いて雷牙は目的地の家のまえに辿り着いた。表札には山本の文字。呼び鈴を鳴らすとまもなく「はい」という返事と共に扉が開く。


「あら…あなたは…」

「お久しぶりです、霧雨雷牙です。先日出所しました」


 雷牙が訪れたのは、秋生の実家だ


「そう…大変だったわね、休んでいきなさい…」


 家に上げでもらい、仏壇に手を合わせる。秋生の両親は秋生の生前に神道達からイジメにあっている話や雷牙に助けてもらった話を聞いている。そして神道の邪悪な素行や親の権力を知っており、雷牙は犯人ではないと信じている。


「雷牙君、大変だったな…」


 秋生の親父さんだ。


「ご無沙汰しております。秋生くんに挨拶にきました」

「そうか…ありがとな」


 挨拶をすましたころ、おふくろさんがお茶を淹れてきてくれた。秋生の両親と色々話をした。


 ………


 秋生は自分の身に起こっていることを両親に話していた。最初こそ耐えていたものの、金銭の要求や怪我をして帰る頻度が多くなり、隠し通せなくなったのだろう。

 イジメグループは神道天音を中心に、三谷恭一、三日月碧みかげあおい石田剣いしだつるぎの4人。学校側に言っても神道の親が政治家であるためなのか、対処をしてもらえなかった。我が子を助けるため必死だった両親はある日、直接神道家に連絡をしたのだがこれが奴の怒りに火をつけたのだろう。

 それからまもなく、秋生は亡くなった。ライガが捕まったが全く証拠もなく、神道達を調べて欲しいと懇願しても一切の捜査はなく、半ば無理矢理事件は解決された。


「私達はあいつが憎い…」

「あれだけのことをして、何が若手大臣だ!」


 秋生の両親の怒りと絶望が溢れる。


「俺は必ずあいつらに復讐します」

「…私たちに出来ることがあったらいつでも言ってくれ」


 ………


 雷牙は秋生の実家をあとにした。この復讐は自分だけじゃない。秋生や、秋生の両親、そして零司。必ず果たすと心に決めて雷牙は歩いていく


 雷牙は龍顎駅に戻った。時刻は夕方四時、集合まであと5時間。雷牙は零司に秋生の実家に行った旨をラインする。すこしやりとりをして、時間まで夕飯がてら近くの店で落ち合う事にした。しばらく歩き、店についた。入るとすでに零司はいた。零司も秋生の両親とは何度か会っていて、状況は概ね理解していた。雷牙は零司の15年間も気になり、切り出す。


「零司、お前はこの15年、何があったんだ?」

「長くなるしな、いつか気が向いたら話すよ」


 雷牙もこれ以上詮索はやめた。話してくれるときを待とうと思った。その後、仕事を終えた冬吾も合流し、食事を終えた後工場に向かう。すでに咲衣とジャックは居た。


「みんな早いな、まだ8時前だぜ」


 ジャックがいう、次に雷牙が話す。


「…みんな、俺の考えをを聞いてくれないか?」


 雷牙は秋生の実家に行き、秋生の両親をみて、極力犠牲を出してはいけないと思い考えていた。


「正々堂々でいいとは思うけど、向こうがどうでるかだね」

「おもしろそうじゃん、俺は賛成だ」

「僕も賛成です」


 咲衣とジャック、冬吾も賛成だ。


「レイジはどう思う?」

「…まぁ、逆らえば殺るだけだ」


 時間も頃合いになってきた。5人はジャックの運転するアルファードに乗り込み、悪流紅蓮威のアジトに向かった。外は雲一つない星空だった。

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