第3話 SPEAR
冬吾の部屋には車の雑誌や写真、ミニカー。人目で車好きとわかる部屋だった。
「僕、車好きで、車好きのあつまりだったSPEARってチームにはいったんです」
冬吾は自分のこととSPEARのこと、そして悪流紅蓮威のことを語った。
………
冬吾はとある工業高校を卒業後、某メーカーの下請け工場で働いている。礼儀正しく真面目な彼は工場のパチンコ好きやキャバクラ好きとは仲良くならなかった。そんな中、ネットで車好き仲間の掲示板で当時のSPEARのリーダー、
ある日のこと
この辺りを拠点とする半グレ、悪流紅蓮威のリーダーを名乗る
3人になったSPEARだが、解散しようと言う者はいなかった。空也が作って、残してくれたこの縁を無くしたくなかったのだろう。最年長の咲衣が新リーダーとなり、SPEARはまだ生きている。先程のように、悪流紅蓮威の連中からは敵視されている。彼らは抗う力がなく、肩みの狭い毎日だった。
冬吾は雷牙と零司の強さをみて、この2人と力を合わせれば抗えるのではないかと考えた。
………
その後、雷牙も身の上話を語った。雷牙自身も目標がある。自分を嵌めた神道天音やその仲間達がいまどうしているのか、両親の事故の真相は何なのか。そして、奪われた15年の落とし前をどうつけさせるか…情報屋になった零司はどこまでしっているのか。
「零司さんから聞いてはいました…雷牙さん、神道天音は…多分、誰でも知ってる人物です」
そういうと冬吾はスマホを取り出し、とあるサイトの動画を再生する。
「え、何これ?小型のパソコン?」
雷牙はスマホを初めて見た。
「いまはそれは置いときましょう、それよりコレ…」
「…神道天音環境大臣?…だと?」
神道は政治家、それも大臣になっていたのだ。それもそのはず、やつの親は現総理大臣。ナナヒカリでその座についたのだろう。雷牙の中で沸々と何かが熱くなる。
時刻は深夜1時過ぎになっていた。冬吾は翌日も仕事だ、これ以上起きていたら仕事に支障がでる。2人は眠りについた。
………
一方その頃
「…出てこいよ」
零司は人気のない公園に来ていた。
「わかってやがったのか、情報屋さんよ」
赤ジャージ3人組が報復に来ていた。
「今度は3対1だ、泣き入れても許さねぇぞコラ」
おまけに3人は刃物をチラつかせる。だが、零司は冷静だ。
「ソレを出したからには…遊びじゃすまないよ」
「カッコつけてんじゃねーぞコラァ!」
赤ジャージ達が一斉に襲いかかったそのとき
「パンッ」という音と同時に一人の頭から血が噴き出す。
「え?」
左端の赤ジャージが横を向くと仲間達が順番に頭から血を吹き出していた。そして横を向いた赤ジャージも気がつく。
(あ、俺たちは撃たれたのか)
赤ジャージは3人とも絶命した。
白川零司、この男はただの情報屋ではない。早撃ち、そして接近戦闘もこなす、一流の暗殺者になっていた。その背景で、彼はどれほどの努力と、犠牲を払って来たのだろうか。
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