第81話

部屋を出た俺は、とりあえず歩いて近くの大型ショッピングモールまで足を運んだ。




好きなメンズ服のショップに立ち寄ってあれこれ物色してみるが、イマイチ気分が乗らない。




小1時間程見て回ったものの、結局何も買わないまま店を出て。




メンズのフロアを通り過ぎると、目の前にはレディースフロアが。




ふと、店頭でポーズをとるマネキンが目に入った。




頭が金髪のそれは、薄い黄色の生地にレースがあしらわれたシフォンワンピを着てて、思わず足を止めて見入ってしまった。




ひよりに似合いそうだと、ぼんやりと考えながら。




そんな自分自身にハッと我に返って、フッと目を反らした。




そして小さく舌打ちして、ファッションフロアを後にした。










フードコートに足を向けた俺はアイスコーヒーを注文して、品物を受け取って窓際の席に座る。




壁に貼られた『禁煙』の文字が、もやもやした俺の胸中を逆なでしている様でイラッとする。




今の世は、喫煙者に優しくない。




俺の様なヘビースモーカーは、どんどん居場所を奪われていく。




来る場所を間違えた。




どうせ当てもなく出歩くなら、自由にタバコを吸える場所に行けば良かった。




と言っても、自由にタバコ吸える所なんて、カラオケ屋かパチンコ屋くらいしかない。




1人で行くにはどっちも微妙で。




ましてやギャンブルに興味がない俺に、パチンコ屋とゆー選択肢はない。




俺は小さく溜息を吐き出して、タバコの代わりにブラックコーヒーを煽った。

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