第77話
『大丈夫?抑えられなくてゴメン』
俊ちゃんは心配そうにあたしを見つめながら、頭を優しく撫でてくれて。
そんな俊ちゃんが愛しくて、広い胸に抱き着こうと体を捩らせた瞬間。
下腹部がズキンと鈍い痛みを訴えた。
あぁ、そっか。
あたし、俊ちゃんとひとつになったんだ。
あまりの痛さに、その瞬間の感動を味わう事すら出来ないまま、意識を手放していた事に気付いた。
でも、俊ちゃんはあたしを抱いた事の喜びを噛み締めるかの様に、幸せそうな顔をしていて。
それだけで、あたしの心は満たされた。
そして、2人ひとつになれた幸せを噛み締めたまま、俊ちゃんの腕に包まれて、夢の中へと堕ちていった。
『じゃあ、また連絡する。明日から仕事頑張れよ?』
『うん。俊ちゃんも。ネックレスありがとう』
駅のロータリーで車を降りる前に、俊ちゃんはあたしの首にネックレスを付けてくれて。
小さなチャームを撫でながらお礼を言って車を降りた。
発進してすぐに、ハザードランプを3回点滅させて、ロータリーを出て行く俊ちゃんの車。
それを見えなくなるまで見送ったあたしは、アパートに向かって歩き始めた。
足を動かす度にズキンと痛む下腹部。
でも、不思議と不快感はなかった。
むしろ、幸せな痛みだと思える。
あの行為の気持ち良さを体感するまで、まだまだ時間がかかるかもしれない。
それでも、好きな人に与えられる痛みなら耐えられる。
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