第74話

短く答えたあたしに、俊ちゃんは安心したように優しく微笑んで、再び唇を重ね合わせた。




今度のそれはさっきまでのキスとは違い、激しく欲する様な、欲望を満たすようなキスで。




何度も角度を変えながら唇を貪り、熱い舌があたしの口内に侵入を試みて。




それを受け入れる様に僅かに口を開ければ、熱い舌が一気に口内を侵食していく。




『んっ………ん……』




舌を絡め取られる度に漏れる、自分の物とは思えない程に甘い声。




ただそれだけで、恥ずかしさと興奮が混ざり合い、あたしの体を熱く火照らせる。










長い間交じ合わせていた唇と舌は、離れたと思った瞬間、あたしの首筋に触れて。




味わうように舌を這わせて、時たま薄い皮膚を吸い上げられると、チクンと小さな痛みが襲って。




その痛みに小さく反応していると、今度は耳たぶを甘噛みされて。




耳元から首筋を縦横無尽に行き来する唇と舌に甘い刺激を与えられ続け、次第に大きくなる吐息。




それだけで頭がフワフワしていたあたしは、次の瞬間、ビクッと体を強張らせた。




俊ちゃんの大きな手が、バスローブの腰紐を解いていたから。




スルリと抜き去られた腰紐と、ゆっくりと開かれたバスローブ。




仄かな明かりの中で、あたしの体があらわになった。




とっさに腕で隠そうとするあたしを制して、俊ちゃんは優しく囁く。




『見せて。誰にも触られてないひよりの体、もっと良く見たい』




そう囁いた俊ちゃんは、あたしの胸元にゆっくりと顔を埋めた。

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