第71話
ドキッと跳ね上がった心臓と一緒に顔を上げて俊ちゃんを見上げれば、目の前には優しい笑顔が。
そしてその笑顔は、
『他に見たいお店ある?』
と、静かに問い掛けて。
その声が、まるで『NO』と否定の言葉を待ってるかのように思えたあたしは、小さく首を横に振った。
そんなあたしの顔を見つめてた俊ちゃんは、あたしの手を取って歩き出す。
そして向かった先は駐車場で、静かに発進した車は、気が付いたらホテルの駐車場に停まっていた。
俊ちゃんがエンジンを切った途端、あたしの心臓がバクバクと音を鳴らし始めて。
自然と俯くあたしに気付いた俊ちゃんは、
『ひより』
と、優しく、愛おしげに名前を呼んだ。
その声に促されて顔を上げれば、俊ちゃんはあたしの頬に手を添えて、こっちを見ろと誘導する。
目と目があった瞬間。
『ごめん。俺もう我慢の限界。ひよりが欲しい』
と、僅かに瞳を揺らしながら、切なる欲望を訴えた。
ガチャリと鳴ったロック音に、体が小さく反応する。
心も体もこんなに緊張してるのに、こうゆー時にシャワーを浴びたいって思ってしまうのは、自然の摂理なのだろうか。
生まれたままの姿をさらけ出す前に、綺麗に体を洗いたい。
緊張はピークなのに、何処か冷静にそんな事を考える自分がおかしくて。
そんなあたしに俊ちゃんは、
『シャワー浴びる?』
と、優しく問い掛ける。
『うん』
と、小さく答えたあたしは、俊ちゃんの顔を見る事が出来ず、逃げる様にバスルームに駆け込んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます