第67話
その後、何故か重い足取りで俊ちゃんとの待ち合わせ場所に向かうあたしは、さっきの彼の瞳が頭から離れなくて。
こんな心も体も鉛みたいに重たい状態で、俊ちゃんとのデートを楽しめるのかな。
そんな不安を抱きながらも、あたしの足は俊ちゃんの元へとひた歩く。
とにかく忘れたかった。
昨日の事も、さっきの彼の瞳も、彼の面影そのものも。
大好きな俊ちゃんの顔さえ見れば、一気に頭から消え去ると信じて。
ただひたすら、俊ちゃんの笑顔を目指して、自棄に遠く感じる駅までの道程を、重たい足と心を引きずりながら歩き続けた。
ロータリー横の駐車場に、見慣れた黒いマークX。
運転席に座ってハンドルに腕を預けてる大好きな人を認めたあたしは、少しだけ歩調を速めて俊ちゃんの元へ向かった。
助手席側に回って窓をコンコンと叩けば、約2週間ぶりに見る優しい笑顔が振り向いて。
そしてあたしが開けるより先に、俊ちゃんが内側から助手席のドアを開けて中へと促してくれる。
そんな紳士な所も、優しい笑顔も2週間前と変わらない。
そんな当たり前で些細な事ですら、今のあたしに小さな胸の痛みを与えるなんて。
あたしの胸の痛みなんか知る由もない俊ちゃんは、あたしが大好きな優しい笑顔で、
『久しぶりでごめんな。淋しかっただろ?』
と、あたしの頭を撫でながら。
うん。淋しかったよ。
会いたかったよ。
そう喉から出かかった言葉を飲み込んで、小さく首を振りながら答える。
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