第62話
その言葉にカチンと来たあたしは、
『別に好きでナンパされてるわけじゃないし。大体、ナンパするような軽い男なんて嫌いだもん』
と吐き捨てて、フンッとそっぽ向いて部屋へ向かった。
助けてくれた事は感謝するけど、言い方がいちいち気に入らない。
優しさがない言葉。
1人ムカムカしながら由香里が待つ部屋に向かう途中だった。
背後に人の気配を感じたと思った瞬間、急に腕を捕まれて。
そのまま勢いよく引っ張られた体は、近くにあった空き部屋へと押し込まれた。
そして壁際へと追い詰められて。
壱星クンはあたしを逃がさない様に両腕を壁についた。
そのままの体勢で、次々と痛い所を突いた言葉を発する壱星クン。
あたしはその都度言い返してみるけど、何の説得力もない言葉で。
それを自分で分かってるから余計に悔しくて。
『何が言いたいの!?』
と怒鳴り付けたあたしに、壱星クンは
『別に。ただ、お前も十分軽い女だと思っただけ。ここで俺が手ぇ出しても案外簡単に受け入れたりしてな』
と、答えた。
軽い女呼ばわりされた事に腹が立ったあたしは手を振り上げるが、いとも簡単に捕まれて。
手首を握る手にグッと力が入って、あたしは痛みに顔を歪めた。
それでも虚勢を張るあたし。
『馬鹿にしないでよ!あたしは、あんたがキスしてたような女とは違う!』
そう声を張り上げたあたしに、壱星クンは言う。
『へぇ………なら、試してみるか?』
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