第57話

冷めた目で見下ろす俺を、ひよりは戸惑いを隠せない様子で見上げる。




『ちょっ………何?』




戸惑う顔とは裏腹に、年上の威厳を見せるかの様に強い口調で問い掛けるひよりを見下ろしながら、俺は低い声で答える。




『軽い男は嫌い?へぇ………じゃあ今俺達と遊んでんのはどうゆー事?』




俺の的を射た質問に、グッと奥歯を噛み締めるひより。




それでも負けじと言い返してくる。




『由香里1人で行かせる訳にはいかないから!あたしは来たくなかった!』




その言葉に、俺はハッと乾いた笑いを零した。




『来たくなかったわりには随分楽しんでるじゃねぇか』




ひよりは悔しげに顔を歪めた。




そんなひよりを、俺は更に追い詰める。




『軽い男が嫌いで?大好きな奴がいて?それなのにナンパ野郎の俺らと遊ぶとか、笑わせてくれんじゃん』




薄ら笑いを浮かべながら言えば、ひよりは怒りや悔しさを孕んだ顔で俺を睨み上げて。




『何が言いたいの!?』




『別に。ただ、お前も十分軽い女だと思っただけ。ここで俺が手ぇ出しても案外簡単に受け入れたりしてな』




冷めた目で見下ろしながら言うと、ひよりは顔を真っ赤にして激しく歪めた。




そして、俺の頬目掛けて手を振り上げて。




パシッ!




乾いた音が室内に響いた。




女に易々と殴られる程、鈍い男じゃねぇんだよ。




ひよりが振り上げた小さなそれを掴んだまま、細い手首を握る手に力を込める。

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