第53話

ひよりの飲みっぷりの良さに驚愕した俺は、ふとコンビニで見たコイツを思い出した。




カゴに詰め込まれた大量の食料。




そして、何本も詰め込まれた酒類。




宅飲みでもするのかと思っていたが、あれはコイツが1人で飲む酒だ。




絶対そうだ。




どんだけ酒豪なんだ。




俺は、ひよりの意外な一面に度肝を抜かれた。




別に女が酒豪だからって、それを悪いとは言わない。




むしろ、飲める女の方が楽だ。




酔ってないクセに『酔っちゃった~』とか言いながら絡み付く女の方がウザい。




でも、やっぱ男ってのは夢を見る生き物で。




ほろ酔いになって頬を赤くしてるくらいが可愛く思えたり。




かと言って、酔わせてどうこうしようとか、そんな下卑た事をするつもりもない。




ただ、俺より強いかもしれないこの女は、かなり手強い。




そんな風に思わずにはいられない状況に、ガックリしただけ。




酔った事がない女は、酔ったフリも出来ないだろう。




だから俺は、ひよりがほろ酔いになって頬を赤くする姿を見るとゆー願望は捨てる事にした。




さらば男のロマン。











若干ガックリしてる俺の横に置いてあるひよりのバッグの中から、スマホが鳴ってる事に気付いた。




その着信音に気付いたひよりの顔がパァッと明るくなったのを、俺は見逃さなかった。




ひよりは急いでスマホを取り出して、『ちょっとゴメンね』と律儀に俺に断りを入れて、いそいそと部屋を出て行った。

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