第52話

時たま歌いながら酒を飲む事、数時間。




勇介と由香里は仲良く出来上がってて、じゃれ合っていたかと思えば本気でどつき合ってみたり。




まるで幼稚園児だ。




俺は元々酒が強い。




だから今んとこ酔った感はない。




やっぱビールはうまいな、なんて思いながらタバコをくわえたまま隣を見遣る。




問題はコイツだ、コイツ。




隣にいるひよりはと言うと。




中ジョッキ片手に運ばれたばかりのフライドポテトを2、3個食って、ビールをグビグビと飲んで。




今度は若干冷めたピザを一口食って、またビールをグビグビグビッと飲んで。




もう一口ピザをかじって、またビール。




しまいには『あ、なくなっちゃった』と残念そうに呟いてるし。




そして空になったジョッキを置いて俺の方を向いたひよりが、




『おかわりは?』




と聞いてくる。




『あ?あぁ、いる』




と短く答えると、ひよりは軽い足取りで壁掛けの内線電話に向かって行く。




『生ふたつお願いします』




と言って電話を切って、また隣に座るひよりを、俺は唖然としながら見ていた。




コイツ、もしかしなくてもアレか?




ザルってやつか?




そう内心呟く俺の視線に気付く事なく、ひよりはジョッキの底に僅かに残ったビールに吸い付いてて。




この細っこい体の何処に、あんだけのビールが入るんだ?




もう6杯平らげてるんだぞ…。




そんな疑問を抱きながらひよりの腹を見る。




ぺったんこだ。




ビールっ腹だったら引くところだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る