第49話
本気で疑ってるし。
『信用出来ないなら、あたしのバッグ預けようか?』
と、自分のバッグを壱星クンに差し出すと、
『いいよ。バックレたらバックレたで勇介が全部払うし。アイツは切ねぇだろうけど、その程度の女達だったって事でキレイサッパリ忘れんだろ』
と、素っ気なく応える。
すごくムカつくその言葉と、タバコを吸う横顔が何故かあたしの胸を切なくさせた。
この人は、人を信じて心を許す事を知らないのかもしれない。
自ら壁を作って、必要以上に他人を寄せつけまいとしてるのかもしれない。
勇介クンみたいな天真爛漫な子とつるんでるのに、壱星クンには暗い影のような物があるのは、あたしの思い過ごしだろうか。
そんな事を考えながら壱星クンの横顔を見つめていると、その顔がゆっくりあたしの方に向けられて。
『なんてな。あんた達が本気で逃げるなんて思ってねぇから安心しろよ。俺、女に逃げられた事ねぇから』
『……………』
前言撤回。
やっぱりただの生意気なクソガキだ。
変に気にしたあたしが馬鹿だった。
そう思いながらも、壱星クンの妖艶な笑みを前に顔が熱くなるのを感じたあたしは、残っていた生ビールを一気に飲み干した。
そんなあたしを、壱星クンは『ククッ』と喉を鳴らして笑ってて。
それは、まだまだあどけなさが残る笑顔で。
心のどこかで 『この笑顔がもっと見たい』と思ってるあたしがいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます