第42話

『俺、道わかんないからお前運転して』




と、満面の笑みで言う勇介クン。




『ナビがついてんだろ』




と、低く応える隣人クン。




『お前の方が運転得意だろ?』




『てめぇの車だろ!てめぇで運転しろ!』




『やだ。女の子乗せて何かあったら困るじゃん』




『だったら最初っからタクシー使えばいいだろ!つーか面前くせぇだけだろ!』




そんな2人の言い合う姿を、交互に見遣るあたしと由香里。




(どっちでもいいから、さっさとしてよ)




未だにやんややんやと言い合う2人に、溜息を吐き出しながら心の中で呟くと、隣人クンが根負けした様子で小さく舌打ちしながら運転席に乗り込んだ。




それを見届けた勇介クンは、したり顔で助手席に乗り込んで。




あたしと由香里は漸く後部席に乗り込む事が出来た。




そして隣人クンの運転で静かに発進した車。




隣人クンは勇介クンの断りもなくタバコに火を点けて、それを見逃さない勇介クンはすかさず文句を言う。




『これ禁煙車』




『うるせぇ。運転押し付けといて文句言ってんじゃねぇ』




(やっぱり口悪い………)




隣人クンが低く唸った言葉に、あたしは若干の嫌悪感を覚えた。




(ほんと、黙ってれば超イケメンなのに、勿体ない………)




ルームミラーに映る隣人クンの顔をチラリと見ながら内心呟くと、ミラー越しに目が合った。




吸い寄せられる様な漆黒の瞳。




その瞳に見つめられて、何故か目を逸らせないあたしがいる。

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