第37話

矢継ぎ早に言葉を繋げた俺に、電話の向こうからは少しの沈黙が。




(おい、寝てんじゃねぇだろうな?)




イビキでも聞こえた日にゃぶっ殺してやると思いながら返事を待ってると、小さな溜息が耳に届いた。




『俺からは何も言わないから安心しろ。ただ、お前はまだ未成年だ。何かあったら責任は全て親の所に行く事だけは忘れるなよ?』




『……………』




『父さんに反発したい気持ちは分かる。でも意固地になって向き合わないのは、ただ逃げてるのと同じ事なんだからな?理解して欲しいなら、ちゃんと話し合え。それが出来ないなら、お前はただの我が儘な子供と一緒だ』




…………正直、心臓をえぐられた気分だった。




痛い所を突かれただけに、俺は言い返す事も出来なくて。




だから俺はさっきまでの勢いとは打って変わり、戦意をなくした様に応える。




『………っせぇな……んな事、言われなくても分かってんだよ………』




意地っ張りな俺は、そう小さく呟いて電話を切った。




確かに俺は反発する事だけに必死で、親父に分かってもらう為の姿勢を見せた事は一度もなかった。




反発してればそのうち諦めるだろうと、安易な考えしか持ってなくて。




それが逆効果だって事も気付かずにいた。




向き合わなきゃ何も変わらない。




言葉にしなきゃ理解してもらえない。




伝えなきゃ伝わらない。




そんな簡単な事すら気付かずに、意地になって家を飛び出した俺を諭したのは、やっぱり親父じゃなくて兄貴だった。

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