第33話

俺が素っ気なく答えると、隼人は苦笑いを浮かべながら言う。




『だよなぁ。まぁ、お前なら黙って座ってても客掴めるってお墨付き貰ったんだけど、無理だよな?』




『無理』




俺が即答でバッサリと拒否すると、隼人は『だよなぁ』と笑ってて。




『てか、お前ホストになったとか言わねぇよな?』




俺が怪訝な顔で問い掛けると、隼人は楽しげに笑いながら答える。




『まさか!女に金貢がせる仕事なんて出来るかよ』




『………そんな仕事に俺を誘ってんのは何処のどいつだテメェ』




俺が呆れ顔で唸ると、隼人はケラケラ笑ってて。




『てか何でそんなチャラくなってんだよ。まるっきりギャル男かホストじゃねぇか』




溜息混じりに問い掛けると、隼人は金髪の髪を弄りながら何て事なさげに答える。




『ずっとバスケにマジんなってたからさ、ただ単に思いっ切りイメチェンしたかっただけ』




(イメチェンねぇ)




半分納得、半分猜疑心の状態で『ふ~ん』と相槌を打つ俺に、隼人は仕切り直す様に言う。




『学校始まって落ち着いたら、みんなで集まろうぜ』




それに軽く返事をした俺は『じゃぁな』と片手を挙げて隼人に背を向けた。




隼人は俺と違って女を無碍に出来ない男だ。




だからあいつがホストになったわけじゃないと確認した俺は、どこかで安堵していた。




それと同時に、




(紛らわしいイメチェンしてんじゃねぇよ)




と毒を吐きながら、再びスタバに向かって足を速めた。

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