第32話

俺が通ってた高校は帰宅部がなくて、強制的にどれかひとつの部活に入らされるとゆーふざけた学校で。




俺と隼人と勇介はタッパがあるってだけでバスケ部に勧誘されて、3人ともスポーツは得意だった事もあって断る自由もなく入部して。




3人とも1年の時からレギュラー取れるくらい、そこそこ活躍してきた。




高校卒業後、隼人は違う進路に進んだから、この春からは会う機会も減るだろう。




まぁコイツの事だ。




こっちにその気がなくても飲みだの合コンだのの誘いを寄越すだろう。




(それにしてもコイツ何気にチャラくなってねぇか?)




2年でキャプテンに抜擢された隼人は、意外にも真剣にバスケをやってて、髪型もサッパリとスポーツ刈にしてたのに。




目の前にいる隼人は、部活を引退してから伸ばし始めた髪が金髪になってて、ピアスやシルバーアクセがジャラジャラしてて、どっかのギャル男に大変身だ。




珍獣でも見たかの様な俺の内心を知ってか知らずか、隼人は軽い口調で言う。




『お前、一人暮らしなら金がいるだろ。イイ仕事あるんだけど、試しにどう?』




…………妙に嫌な予感。




コイツの変わり様と、『イイ仕事』ってゆーフレーズに、自分の顔が歪んだのが分かった。




そして隼人は、




『俺の知り合いがホスト募集しててさ』




予感的中。




『お前の写真見て、俺の店に欲しいから連れて来いって頼まれたんだよ』




勝手に人の写真見せんじゃねぇ。




そう心の中で文句言いながら、まるで興味なさげに答える。




『俺が女相手に愛想振り撒けると思うか。他あたれ』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る