第31話

それに、万にひとつの可能性で、マジに付き合いたい女だって出来るかも知れねぇ。




そうなれば金がかかる。




女は誕生日だクリスマスだ記念日だと、いちいちイベント事を大事にしたがる。




そんな時、男の見栄っつーのが現れるらしく。




過去にマジな付き合いをした事がない俺にとっては、到底理解出来ないくだらねぇ見栄だ。




そんな俺でも、マジで惚れちまうような女が現れるかもしれねぇ。




(なんでだ?)




ふと頭の中に疑問符が。




『マジで惚れちまうような女』ってフレーズが出た瞬間、ほんの一瞬だけ303号室の女の顔が頭に浮かんだ。




その奇妙な現象(?)のせいで、俺の脳内にハテナが激しく飛び交い始めて。




(なんでこのタイミングであの女が出て来るんだよ)








自分の思考回路ながら、若干のいらつきを覚えたままスタバに向かう道中の事。




真っ正面から見知った顔がこっちに向かって歩いて来るのが見えた。




春休みって事もあり、同世代の人間が行き交う雑踏の中、目敏く俺を見つけたソイツは片手を挙げながらこっちに近付いてくる。




『お~い壱星!』




無駄に通る声で名前を呼ばれた俺は『ちっ』と舌打ちした。




『卒業式以来じゃん。一人暮らし始めたんだって?親父さん、よく許したなぁ』




俺の前で足を止め、間髪入れずに喋り出すのは高校3年間同じクラスの仲間だった隼人だ。

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