第17話
俺の唇ひとつで気が済むなら、いくらでもどうぞ的な考えで梨華のキスを受け入れる。
ただ、俺から梨華の体に腕を回す事も、舌を絡める事も、一切しない。
俺はただひたすら、されるがままの人形になっていた。
梨華の、瞬きする度に風が吹きそうな程に付けられたツケマ。
そのツケマで縁取られた、閉じられた目を冷めた目で見据えて。
(ツケマ、重たくねぇのかな)
なんて考えていたら、ふと人の気配を感じた。
チラリと横目で見ると、さっきのコンビニで大量買いしてた女がいた。
袋が切れそうな程の荷物を両手に持った女は、俺と梨華のキスシーンを呆然と見つめてて。
次第に紅潮していく顔が、妙に可愛いと思ってしまった。
てか、めちゃくちゃ俺の好きなタイプだ。
俺の周りの女と言えば、梨華みたいな派手に化粧を施して、無駄に色気を出そうと頑張る様な女ばっかりで。
化粧とったら『お前誰だ?』とツッコミたくなるような女ばっかりで。
こんなナチュラルメイクでも可愛い女なんていやしねぇ。
思いがけず好みのタイプに巡り合った俺は、何故だか無性にこの女をからかいたくなった。
俺は女と合わせた視線をそのままに、目元で笑みを浮かべた。
そしてポケットに突っ込んでた手を引き抜いて、梨華の腰と後頭部に腕を回す。
後は梨華に応える様に濃厚なキスを交わせば。
チラリと薄目を開けて確認すると、女は茹蛸の様に顔を真っ赤に染めながらダッシュでその場を後にした。
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