第16話

ペットボトルや紙パックの飲み物、菓子パン、プリンだのヨーグルトだののスイーツ、スナック菓子やアイス、おまけに酒。




ありとあらゆる商品が詰め込まれたカゴは、持ち手が外れそうな程に歪んでて。




それを両手で持ちながら必死にレジ台に上げようと頑張る姿にプッと小さく吹き出した。




しまいには店員に助けて貰ってて。




(まさか1人でアレをたいらげる訳じゃねぇよな?)



と、どうでもいい疑問を抱きながら目当てのタバコを2つ手にした俺はさっさと会計を済ませて店を出た。




(梨華は帰ってんだろうな?)




アパートに向かいながら梨華が既にいない事を願う。




そして3階までの階段を気怠げに上りきった時、バタンッと勢いよく目の前のドアが開け放たれた。




中から出て来たのは、怒りMAXの梨華。




ちゃんと服着て帰るところだったらしい。




俺に気付いた梨華は、キッと俺を睨み上げながら言う。




『あたしをフッた事、後悔させてやるから!』




出た出た。プライドの塊らしい言葉。




『はいはい』




と軽くあしらえば、梨華は益々怒りに満ち溢れた般若になって。




『あたしの事バカにしてんの!?』




『してねぇよ。ただ飽きただけ』




梨華は今度は赤般若に変身した。




(だから怖ぇって)




『元気でな』




軽~く声をかけて梨華の横を擦り抜けようとした時だった。




梨華に勢いよく腕を引っ張られたかと思うと細い腕が首に回されて、あっと言う間に唇が塞がれた。




口の中に入って来る舌の不快感に顔を歪ませるが、俺は抵抗しなかった。

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