第15話

ヘビースモーカーな俺は今まで吸ってたタバコを揉み消して、また新しいタバコをくわえようと手を伸ばす。




だがさっきのが最後の一本だったらしく、タバコは空っぽだった。




『ちっ』と舌打ちした俺は財布を手に立ち上がる。




次の瞬間、梨華が俺の腕にしがみついた。




『どこ行くの!?』




そう喚く梨華を見下ろしながら答える。




『タバコ買って来る間に服着て帰れよ。じゃあな』




そう冷たく吐き出した俺に、梨華は言葉を無くしていた。




捕まれていた腕を振り解いて、俺はコンビニに向かう。




プライドが高い梨華にはあれくらい冷たくする方が諦めてもらいやすい。




男にフラれたってだけでプライドが傷ついて、次の男を探すはずだ。




俺を見返す為に。




俺と付き合ったのだって、前の男にフラれた腹いせだったから。




『前の男よりイイ男と付き合う事が、アタシの復讐なの!』




いきり立った梨華が言ってた言葉を思い出して、フッと乾いた笑いを吐く。




(さっさと俺よりイイ男見つけてくれ)




徒歩1分のコンビニを目指しながら、梨華に対する餞の言葉を心の中で呟いた。










コンビニの店内は仕事帰りのサラリーマンや子連れの母親や若いカップルなんかで賑わってて、人混みが嫌いな俺は小さく舌打ちをする。




そして脇目も振らずタバコの陳列棚に向かう途中、カゴいっぱいに商品を詰め込んだ1人の女が目に入った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る