第14話

『寝言は寝て言え』




と、そっけなく吐き出すと、梨華はケタケタと笑ってるし。




(今の、何が可笑しかったんだ?)




そう頭の中で問い掛けながら怪訝な顔で梨華を見遣れば、目に飛び込んで来るのは、ふんだんに化粧が施された美人顔ではなく、ほよんと揺れる胸元で。




俺の腕にしがみついてるせいで、梨華の胸の谷間が更に強調されてて。




(別れる前に一発ヤッとくか………)




そう尋ねると、素直なムスコは即答で『よしきた!』と答えてくれる。




俺はタバコを揉み消して、そのまま梨華を押し倒した。




広めのソファはベッド代わりにも調度よくて、そのまま別れのセックスを交わした。




この体は惜しいけど、独占欲が強い梨華には正直ウンザリしてた。




コイツだって別に俺の事が本気で好きなわけじゃない。



周りに自慢したくて、羨ましがられて優越感を感じたくて、人から『イケメン』と言われる俺と付き合ってただけの事。




俺は行為が終わると速攻で脱ぎ捨てたスウェットを着て、タバコに火を着けながら最低な一言を言う。




『お前とはこれで終わりな。服着たら帰れよ』




俺の言葉に、必死で整えようとしてた呼吸音がピタッと止まった。




『は?』




素っ裸のままソファに横たわる梨華は、顔だけ俺の方に向けて素っ頓狂な声を上げた。




『終わりって何?意味わかんないんだけど』




ゆっくりと起き上がりながら問い掛ける梨華をチラリと一瞥した俺は、そっけなく答える。




『もうバイバイって事。別れようぜ』




俺の冷たい一言に、梨華の顔が少しずつだが確実に般若と化して行く。




(こわっ)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る