第13話

ピンポーン!




軽快なインターホンが鳴った。




インターホンカメラの映像をモニターで確認するけど、誰もいねぇ。




俺は小さく舌打ちしながらドアを頭ひとつ分だけ開けて外を確認した。




するとドアの死角からニュッと見知った顔が現れて。




『来ちゃった♪』




と、猫撫で声で言う女。




一応『彼女』と言うカテゴリーに属する、梨華。




彼女と言っても、マジな付き合いじゃない。




適当に裸でじゃらけるのに都合がいい女。




隣に置いておくのに都合がいい女。




俺にとっては、それだけの付き合い。




それもそろそろ飽きてきた俺はアパートの場所も教えず、連絡もとらず、自然消滅を目論んでたっつーのに。




(なんで此処が分かったんだ?)




頭の中で疑問を唱える俺。




そんな俺の脳内を透視したかの様に『勇介から聞いた』と、満面の笑みで答える梨華。




勇介とは、引っ越しを手伝わせた仲間の1人だ。




(あの野郎、余計な事しやがって。覚えてろよ?)




と、そこにはいない勇介を睨みつけた。




そうこうしてる間に、梨華は勝手に部屋に上がり込んで、真新しい室内をキョロキョロと見て回る。




そんな梨華を無視してソファにボスッと腰を沈めてタバコに火をつける。




すると梨華が擦り寄る様に隣に座って体を密着させて来て。




さも鬱陶しげに体を捩っても梨華はめげずに擦り寄って来る。




しまいには、




『あたしも此処に住もっかなぁ』




なんてふざけた事言いだして。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る